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2024-02-29 00:00
右翼ポピュリズムが国家安全保障を蝕む悪影響
河村 洋
外交評論家
右翼はしばしば、自分達の方が愛国的情熱と国防への尽力では国内政治上の反対勢力を上回っていると喧伝している。しかし彼らの独善的な統治によって国家も国民も危険にさらされる恐れが高まる。昨年10月にハマスがイスラエルに侵攻してガザ地区との国境付近のキブツ住民や音楽祭参加者への暴行虐殺におよんだ際に、『サピエンス全史』および『ホモ・デウス』の著者で著名なヘブライ大学のユヴァル・ノア・ハラリ教授は『ワシントン・ポスト』紙昨年10月11日付の投稿で「ネタニヤフ政権が政府の運営に失敗したためにテロリストの侵入に対して情報の空白が生じてしまった」と論評している。まず始めにベンヤミン・ネタニヤフ首相は自らの閣僚を忠誠心に基づいて登用したために、国益よりも自身の個人的利益が優先されてしまった。2022年12月に発足した第6次ネタニヤフ内閣では非常に過激で教条的な宗教色の強い組閣を行なったので、政治的分断の扇動と陰謀論の拡散による「ディープ・ステート」叩きばかり行うようになった。その結果、ネタニヤフ氏は治安部隊、諜報機関多くの専門家達から国家安全保障上の切迫した脅威に関する必要な情報収集ができなかった。そのように劣化した政策決定過程を通じて、イスラエルはハマスに対して効果的な抑止対策をとれなかった。韓国の元統一相で現在はインジェ(仁済)大学のキム・ヨンチョル教授も、自国『ハンギョレ』紙昨年10月30日付の投稿で同様に「分割統治手法では国民の間で他者への罵倒が扇動され、政府内で部署を超えた意思疎通が阻害されてしまう」と指摘する。言わば、ネタニヤフ政権がハマスの攻撃で犯した情報収集の失敗は、民主主義の失敗による当然の帰結なのである。
さらにガザ戦争によってネタニヤフ氏が、ロシアはイランの動きをしっかり管理していると思い込み、イスラエルが2015年にシリアでイランの代理勢力への空爆ができたという自己欺瞞に陥っていたことが明らかになった。実際にはロシアのウラジーミル・プーチン大統領はイスラエルに対して戦略的に敵対するイランおよびシリアとのバランスをとり、中東での自国の存在感を誇示したかっただけである。その見返りにイスラエルはロシアのクリミア侵攻に対する欧米の制裁への参加を拒否した。しかしウクライナでの戦争が勃発してクレムリンがイラン、シリア、ハマスという悪の枢軸に頼らざるを得なくなると、ネタニヤフ氏が思い描いたロシアとの友好関係などは無意味だと露呈した。中道左派のシオニスト・ユニオンから選出されたクセニア・スヴェトロワ元国会議員は『タイムズ・オブ・イスラエル』紙昨年12月11日付の寄稿で「現在の孤立したロシアはこれまで以上にイランを必要としているので、イスラエルが反欧米ブロックを主導しようというプーチン氏の地政学的な野望に助力する理由はない」と語っている。ネタニヤフ氏はロシアとの戦略的関係を深化させながらアメリカとも緊密な関係を維持しようという似非リアリズムを追求したがために、イスラエルは西側同盟の分断を謀るプーチン氏に都合の良い駒となった。
アメリカでも同様に右翼ポピュリストは敵の特定を誤る。ネタニヤフ氏と同様にドナルド・トランプ氏はプーチン氏に魅了されるあまり、NATO脱退さえ口にしている。また両者とも民主的な法の支配に対抗して専制的な手法を好んで濫用している。トランプ氏は1月6日暴動を扇動し、ネタニヤフ氏は「司法改革」によって政府が司法による権力分立を超越し、自らの政策を実施させようとしている。ネタニヤフ氏は連立政権パートナーの宗教シオニスト党とともに、司法の介入を排除してヨルダン川西岸でのユダヤ人入植を進展させたがっていた。トランプ氏の予備選候補資格がコロラド州とメイン州で否決されたように、ネタニヤフ氏の司法改革もイスラエルの民主的な統治の基盤を守るために最高裁判所に棄却されている。右翼ポピュリストは共産主義革命家さながらに、民主主義を担う責任ある当事者達を「人民の敵」呼ばわりすることを忘れてはならない。彼らが政権を取ろうものなら政府および国家安全保障諸機関の間の戦略的な意思疎通には重大な支障をきたすことは、ハラリ氏とキム氏が述べた通りである。
そのような思考様式もあって、右翼ポピュリストは国家安全保障を犠牲にしてでも自分達の党派的な案件を躊躇なく優先する。それはMAGAリパブリカンによる軍事人事の妨害に典型的に見られる。トランプ時代以前の共和党は国防に強いと自負していた。しかし右翼ポピュリスト達はポリティカル・コレクトネスや人権リベラリズムを嫌悪するあまり、自分達の言い分を押し通して岩盤支持層を狂喜させるためには敢えて国家安全保障上の重要課題さえ犠牲にしても仕方ないとさえ思っている。中でもトミー・タバービル上院議員は白人ナショナリストの「自由」を擁護し、中絶反対の士官の昇進を阻むために軍主要人事での任命を遅延させた。外交問題評議会のマックス・ブート氏が『ワシントン・ポスト』紙昨年6月9日付論説で述べるように、タバービル氏には外敵に勝つための軍事人事の迅速化など関心はなく、軍内部にいる国内の文化戦争での反対勢力に勝つことしか考えていない。さらにジェームズ・スタブリディス退役米海軍大将は、タバービル議員が自分の選挙区であるアラバマ州への宇宙軍本部の誘致画策のため、コロラド州での施設建設という軍の計画への妨害に及ぶという利益誘導丸出しを行なったことを嘆かわしく見ている。
それにも増して問題視すべきは、下院共和党の極右議員達は国内での国境管理強化を交換条件にウクライナとイスラエルへの支援の予算決議を妨害している。しかしジャック・キーン退役米陸軍大将が述べるように両者はそれぞれ別の問題であり、ウクライナでのロシアの勝利は国家安全保障上の重大なリスクである。さらに由々しきことにトロイ・ネールズ下院議員はジョー・バイデン大統領再選阻止だけのためにウクライナ援助に反対している。それら一連の動きは非常に党利党略本位で、国家とは利益相反である。そのように視野の狭い党利党略こそがハマスによるイスラエル攻撃の際には外交不在をもたらした理由は、彼ら右翼がアメリカの駐エルサレム大使の任命を阻止したためである。
さらにアメリカの右翼の間にあるウクライナに関する誤った認識について述べたい。現在はアトランチック・カウンシル所属のジョン・ハーブスト元駐ウクライナ大使は「プーチン氏がウクライナで勝利すればロシアを勢いづかせ、旧ソ連共和国および旧ワルシャワ条約機構諸国にも手を伸ばしかねず、しかもそうした国々の多くはNATO加盟国である」と評している。また元大使は2度にわたる世界大戦を経たヨーロッパで安全保障の礎となったのはNATOであり、それが究極的にはアメリカの安全保障にも寄与してきたとも強調している。よってウクライナの勝利はアメリカにとって重要な国益なのである。最も重要なことに、元大使はロシアと中国を挑発しないように宥和政策をとることは最も挑発的な外交であって、それではアメリカの指導力低下を望む相手の思う壺であると主張する。かつての共和党ならハーブスト氏が述べた原則を理解していた。しかし現在のMAGAリパブリカンはネールズ議員が下院でそうしているように、何の躊躇もなく敵に弱さを印象付けてしまう。さらに悪いことに、トランプ氏が長年にわたってNATO脱退の意志を抱き続けていることは、アメリカとヨーロッパの間で深刻な懸念を呼んでいる。民主党のティム・ケイン議員と共和党のマルコ・ルビオ議員は大統領が誰になろうともNATO脱退を阻止するための超党派の法案を提出し、それはすでに上院を通過した。しかし問題は心理的なもので、トランプ氏が当選しようものなら同盟国はアメリカを頼れないとみなすようになり、やがては西側同盟による抑止力が低下してしまう。こうした事態を受けて、『アトランチック』誌のアン・アップルボーム氏は昨年12月4日付の同誌論説でアレクサンダー・バーシュボウ元米駐NATO大使とのインタビューを引用し、「トランプ氏だとNATOを機能不全に陥らせようとして、アメリカの外交官の会議出席の妨害、あるいは議会に制止されない内に本部に拠出する予算削減を行なう恐れがある」と記している。
非常に重要なことにアメリカでは何人かの政治学者と歴史学者が、冷戦後の共和党は徐々に孤立主義に回帰していたと語っている。そうした状況を踏まえ、親トランプ派のアメリカ刷新センター(Center for Renewing America )のダン・コールドウェル氏は「共和党支持者には『リアリズムと自制』に基づいてアメリカは自由世界の主導者ではなく、世界の中での自らの役割を変えてゆくべきだとの考え方が支持される傾向が強まっている」と評している。同様な流れでヘリテージ財団はかつてのロナルド・レーガン時代には「強いアメリカ」を標榜したが、現在のケビン・ロバーツ所長はウクライナ援助に反対するばかりか、国防予算の削減さえ訴えている。バンダービルト大学のニコル・ヘマー准教授によると、そうしたアメリカ・ファーストの勢いが保守派の間で盛り返しつつあったことが典型的に表れている事象は1990年代に相次いだパット・ブキャナン氏の大統領選挙出馬である。非常に混乱を招くことに、孤立主義保守派の中にはジョシュ・ホーリー上院議員のように「問題はそこでなく、ここにある」と言ってアメリカの外交政策形成者達にヨーロッパから手を引き、自国の中産階級や労働者階級の生活を脅かす中国への対策に集中せよと訴えている。それには大西洋同盟派とアジア太平洋派の競合に留まらぬ問題がある。右翼ポピュリストの間の対中強硬派の見解はトランプ的な損益思考から来るもので、そのため彼らは同盟国をアメリカの負担になる存在と見做してしまう。彼らが主張する中国への戦略的シフトとは自分達をグローバル化の犠牲者だと感じる労働者階級の怒りを反映したものに過ぎない。外交政策で国際主義を奉じるロバート・ケーガン氏らが彼らの馬鹿げた考え方に反論するのも当然である。またデービッド・ペトレイアス退役米陸軍大将は昨年11月のカーネギー国際平和財団での講演に際して彼らの似非リアリズムと贋物の「小さな政府」思考に反論しているが、そのどちらも不動産屋の損益思考に基づいている。テロとの戦いで「アメリカを勝たせた男」は国防政策の関係者に「兵装調達システムを時代の要求に合わせ、全世界にわたる多方面の脅威に対処せよ」と訴えているのだ。
中国に関する右翼の間の主張は1960年代から80年代にかけてのジャパン・バッシャーの議論並みにNIMBYに聞こえる。アジアの同盟諸国は、プーチン政権と宥和してウクライナもヨーロッパ同盟諸国全ても見捨てて構わないと考えるような、彼らNIMBYな対中強硬派を信用すべきではない。日本の岸田政権が彼らに同調しない方針は正しく、それに基づいて上川陽子外相が1月30日の衆議院通常国会での外交政策演説で「欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障は不可分であり」と述べたことは、当然ながら「ウクライナと東アジアの安全保障は不可分」と解釈される。嘆かわしくも故安倍晋三首相はイスラエルのネタニヤフ首相と同様に似非リアリズムの過ちを犯し、モスクワの血に飢えた独裁者との友好関係によって中国に対抗しようと考えていた。ウクライナでの戦争によって、そうした考え方は始めから間違っていたことが判明した。
アメリカの右翼はイスラエル・ハマス戦争でも対処を誤った。テロリストがイスラエルに侵攻した時、トランプ氏は彼らに対する抑止力も戦闘準備もできていなかったとしてネタニヤフ氏を切り捨てた。ネタニヤフ氏が右翼的価値観の共有からトランプ氏に抱いた忠誠心は一方的だったことが明白になった一方で、バイデン氏がハマスに対するイスラエルの戦闘を支援している。しかし実際にはトランプ氏が成功だと吹聴するアブラハム合意によって問題は生じた。イスラエルとアラブ王制諸国との関係正常化を促してイランの包囲を目論む一方で、トランプ氏は東エルサレムでのイスラエル主権、ヨルダン川西岸でのユダヤ人入植、ゴラン高原の併合の承認に見られるようにイスラエルの極右による拡大主義を支持し、イスラエル・パレスチナ間の緊張を悪化させた。そうした情勢下でパレスチナ側への援助は減額した。よってマックス・ブート氏は『ワシントン・ポスト』紙2021年5月12日付のコラムで「一連のアラブ・イスラエル国交正常化ではイエメン、シリア、リビアばかりか最も重要なイスラエル・パレスチナ紛争自体も含めた中東の重大な紛争の解決はもたらされない」と記している。にもかかわらず、トランプ氏は戦争勃発の際には無責任にもネタニヤフ氏を非難した。件の合意成立時にはトランプ氏とネタニヤフ氏は似た者同士に思われたが、両者の衝突は他者を犠牲にしてでも自己利益の最大化を求めるという右翼の性質からすれば当然の帰結である。それは二国間および多国間のパートナーシップには適さない。
反グローバル主義者の中には中国への抑止のためには右翼ポピュリストの方が左翼ポピュリストよりましだと安直に主張する者もいる。それではあまりに皮相的である。ブラジルで何が起きたか。中国が一帯一路のためにアマゾンの森林を通過してペルーに達する鉄道と高速道路を建設するという計画を支持したのは、他でもない右翼のジャイール・ボルソナーロ大統領で、それは現地の動植物相にとっての生態系と先住民の未接触部族の生活に破滅的な影響をもたらしかねない。ここでも右翼が似非リアリズムに囚われて他者を押しのけて自分達の仲間の利益を最大化しようとすることが強調されるべきで、そうなると先住民や生態系への犠牲など顧みられるはずがない。よって彼らは他国や国際社会の安全保障など気にも留めない。中国が計画の再考を要求されたのは左翼のルーラ・ダシルバ大統領が昨年1月に就任してからである。私は必ずしも左翼のルーラ氏を右翼のボルソナーロ氏より好ましく思っているわけではなく、ブラジルで開催される今年のG20とBRICS首脳会議へのプーチン氏招待で明らかになった彼の時代遅れな反植民地主義思想への入れ込みには辟易している。南アフリカのANCから選出されたシリル・ラマポーザ大統領でさえ、政府は国際刑事裁判所の規定を遵守すべきだと要求する民主連盟の猛烈な訴訟に直面し、あのロシア人犯罪者のBRICSヨハネスブルグ首脳会議への招待を断念したことを忘れてはならない。ボルソナーロ氏もルーラ氏も、両者各々のアマゾン開発やBRICS首脳会議への対処に鑑みれば法の支配を軽視しているように見える。実際に現地日系紙『ブラジル日報』昨年9月26日付社説では、両ポピュリストとも欧米との不必要な摩擦もリビジョニスト大国側への不用意な傾斜も望まないブラジルの外交官僚組織にとっては頭痛の種でしかない。何はともあれ、中国が恐ろしいからと言って右翼ポピュリストに味方する理由にはならない。
世界各地で見られる右翼ポピュリストの脅威の間でも、アメリカの大統領選挙は最も深刻な事例である。アメリカはトランプ氏の再選をどのようにして阻止できるのだろうか?ブルッキングス研究所のロバート・ケーガン氏は昨年11月と12月に『ワシントン・ポスト』紙へ立て続けに寄稿し、共和党有権者の間でのトランプ氏への熱狂的な支持 について警鐘を鳴らしている。まず11月30日付の論説では「予備選についても、他の共和党候補の誰もがトランプ氏の岩盤支持層を破壊できない。さらに問題になることは、MAGAリパブリカンは1月6日暴動から他の刑事訴訟事件まで、トランプ氏に関することは何でも正当化してしまう」と記している。それにも増して馬鹿げたことに、彼らは自分達の思い込みでウクライナ、イスラエル、アフガニスタンでの失敗をバイデン氏のせいにしているが、実際にはトランプ氏こそがこれらの混乱をもたらした責めを負うべきなのである。さらに重要なことに「正気の共和党政治家は完全に脇に追いやられ、先のトランプ政権に入閣していた『政権内の大人』も公衆の面前で彼を非難することには躊躇している」と指摘する。トランプ氏を阻止するために、続く12月7日付の論説でケーガン氏は「共和党でも特にニッキ・ヘイリー氏は立憲政治を軽視するような人物の候補資格を問うべきだ」と述べている。しかし共和党の競合候補全員にはトランプ氏の候補資格を否定する考えは全くなく、彼が指名されても従うという党派的忠誠心を強調するばかりである。非常に注目すべきことにトランプ氏が自身を訴追の犠牲者だと強調すればするほど、彼の支持者達は益々アメリカの司法体制とエリート全体に対する怒りを爆発させてしまう。よって共和党にとって、そのようなMAGAリパブリカンを刺激することは危険である。こうした観点からケーガン氏は「ミット・ロムニー、リズ・チェイニー、コンドリーザ・ライス、ジェームズ・ベーカー諸氏ら共和党の古参有力政治家、そして前政権閣僚のマイク・ペンス、ジョン・ケリー諸氏らに、アメリカの民主主義を守るためには全国的な運動を主導するように」と訴えている。つまるところ、トランプ阻止で重要になってくるものは共和党正統派の意志である。彼らはすでにリンカーン・プロジェクト、共和党説明責任プロジェクト、そして「法の支配を支持する共和党」といった運動を立ち上げた。古参有力政治家たちはそうした運動にどのように参加してゆくのだろうか?
右翼ポピュリズムの高まりを抑えるには、民主主義の持続性が重要になる。昨年10月に慶応戦略構想センターは慶応大学の細谷雄一教授と一橋大学の市原麻衣子教授によるオンライン対話を主宰し、世界に広がる民主主義の不況が安全保障に与える影響について考察した。二人の学者は対話の中でリビジョニスト勢力による情報工作に対する西側民主主義の脆弱性を中心に議論を深めた。現在、ヨーロッパと北アメリカの先進民主主義諸国はポピュリズムの台頭に苦悩し、それは反エスタブリッシュメントの怒りと移民排斥のネイティビズムといった形で典型的に表れている。最も顕著なものでは、MAGAリパブリカンは小さな政府の理念を誤用してヘイトのイデオロギーを掻き立てるとともに、社会経済的にも文化的にも恵まれない人々に攻撃を加えるようになっている。自分達がグローバル化の犠牲になっていると感じる人達は、右翼デマゴーグが強く断固とした姿勢を見せているからと称賛してしまう。しかしそのように「俺だけが解決できる」といったアプローチでは、ハラリ教授が言うように政府が機能不全に陥り国家の安全保障は損なわれるだけである。戦略構想センター主催の対話では、市原教授はロシアと中国がIT技術の効果的な活用によってどのように情報偽装を行なって欧米の国内政治に工作を仕掛けているかを説明した。二人の学者は民主主義諸国には敵国の工作から自国を守る対抗策が必要だとの見解で一致した。
そうした状況下で日本、オーストラリア、ニュージーランドにように右翼ポピュリズムの高まりを抑えるうえで比較的上手くいっている民主主義国もある。特に日本では細谷教授が述べるように国民の間で政府、メディア、既存の知識人に対する信頼が高く、陰謀論も拡散が抑止されている。また私としては英連邦の両自治領にも注視を訴えたいのだが、それは両国とも英米政治文化圏にありながら扇動政治家の急激な台頭には深刻に悩まされてはいないからである。太平洋の三つの民主主義国家は、国際社会に対してポピュリズムへの対処で何かを示唆できるのだろうか?
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