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2024-04-25 00:00
トルコ統一地方選で敗北、プーチン化に失敗したエルドアン
舛添 要一
国際政治学者
3月31日に行われたトルコの統一地方選は、レジエップ・タイイップ・エルドアン大統領(70)の与党が惨敗した。イスタンブールやアンカラでは、野党候補が勝った。エルドアン政権にとっては、大きな打撃である。イスタンブール市長選では、最大野党の共和人民党(CHP)の現職のエクレム・イマモールが51.1%を得票し、与党、公正発展党(AKP)のムラト・クルム候補の39.6 %を大きく引き離した。また、首都アンカラでもCHPの現職のマンスール・ヤワシュが60.4%を得票し、与党候補(31.7%)に勝っている。この2都市で与党が市長職を奪還できなかったことは、エルドアン政権にとっては大きな失敗である。
その他、大半の主要都市でCHPが圧勝した。主要30都市のうち、イズミル、アンタルヤなど14都市で勝っている。AKPが勝ったのは12都市のみである。伝統的なAKPの地盤である中部でもCHPが勢力を拡大した。全国81市長選のうち35でCHPが勝利した。AKPは24市で勝っている。全体の得票率は、CHPが37.76%、AKPは35.48%であった。前回の2019年の地方選と比べると、AKPは9%の得票減である。エルドアンは、1991年の総選挙に立候補するも落選したが、1994年3月にはイスタンブール市長選に立候補し、当選した。2001年8月にはAKPを結成し、党首に就任した。2003年3月には国会議員に選出され、首相に就任した。2007年7月には国会議員に再選され、8月には第2次エルドアン内閣を発足させた。2011年6月には国会議員に3選され、7月に第3次内閣を組閣した。2014年8月に、トルコ初の直接選挙による大統領選挙で当選した。それ以前は議会が大統領を選んでいた。2017年には大統領権限の拡大を目的とした憲法改正を実現させ、2018年の大統領選挙で再選された。しかし、2023年の大統領選挙では野党統一候補に追い上げられ、決選投票で何とか当選するという状態となった。
首相時代から通算すると、エルドアンは、20年以上にわたって権力の座にいることになる。政権初期には経済運営に成功し、インフラの整備も進めて高い支持率を誇った。しかし、政権が長期化するに従って、言論弾圧など権威主義的傾向を強めていった。2016年7月には軍事クーデターが失敗すると、エルドアンはさらに規制を強化。まさに、「長期政権は腐敗する」という事態となっていったのである。地方選でのAKP敗北の最大の原因は、長引くインフレである。70%近いインフレ率が庶民の生活を直撃している。この庶民の不満が反エルドアンへの流れを加速化させたのである。エルドアンは、「今回の結果を真摯に受け入れて、大いに反省する」と敗北宣言をした。これから経済政策を練り直して、インフレを抑えることに全力をあげる決意である。
今のトルコ憲法は、大統領の任期を2期までに制限している。しかし、エルドアンはさらに長期政権を続けることができるように、憲法を改正して2028年の次期大統領選に出馬する意向である。プーチン大統領が憲法改正によって、超長期政権を維持してきている手法を真似ようというわけである。しかし、今回の地方選の敗北で、その目論見は潰え去ってしまった。プーチンの手法は使えなくなったと言ってよい。イマモール市長が強力なライバルとして躍り出てきた。エルドアンとしては、自分の後継者を選んでAKP党内で影響力を保つしか手はなさそうである。
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