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2007-11-19 00:00
訪中して感じた中国の環境問題の深刻さ
伊東道夫
会社員・経済学博士
先月末、北京へ出張に行ってきた。出張に行く前、2008年オリンピック開催を控えた北京がどのように変化しているのか、大変興味と期待を抱いていた。出張当日午後、北京の国際空港に降り立って空港ビルを出た時に最初に驚かされたことは、北京の空気の汚染状況であった。空には全体的に靄がかかったような状況で視界が悪く、深呼吸のできない状態であった。飛行機の中で説明があったのは、「北京の天気は晴れ、気温は15度」であった。晴れでこの状況とは、予想をはるかに超える大気汚染の進捗状況であり、不安を感じた。「こういった状況でほんとうに来年のオリンピック開催に影響はないのであろうか?オリンピックといえば運動の祭典である。競技者にとって空気は食事と同じくらい大事な条件ではないか。果たして、こういった条件下で良い成績が出せるのであろうか?」と自問自答したぐらいである。
現在、中国全土でこういった環境問題が深刻化している。特にここ1年ぐらいで取り上げられているのが、人間の生活に直接関係のある「水」、「空気(大気)」の汚染問題である。大気汚染については、火力発電用として、冬季の暖房用として大量に使われている「石炭」が、また、西側の砂漠地域で大量に発生し東へ飛来してくる黄砂が、中国での大気汚染の昔からの原因となっている。また、最近話題になっている大気汚染の原因としては、車の排気ガスである。近年の経済発展を象徴するように車の数が当局の予想をはるかに超える勢いで増え続けている。特に経済発展の著しい沿海地域の大都市にその兆候が多く、経済発展の恩恵を受けた富裕層達が購入を続けているようである。上述した大気汚染によって、北京の青空は失われてしまった。
中国当局は、来年開催されるオリンピックに出場する選手たちにできるだけ健康上の影響が出ないよういろいろな政策を打ち出している。例えば、オリンピック開催1ヶ月前から競技期間中は、市内の車を半減し、空気をきれいにするなどの処置がとられるようである。確かにオリンピックを成功させることも重要かもしれないが、もっと将来を見据えた政策を真剣に考えていかないと大変なことになる。例えば、西の砂漠地帯から黄砂が東のほうへ飛来し、大陸の大気上の汚染物質やウイルスを砂に付着させたまま日本に飛んできて、日本が影響を受けることが懸念される。また、車の排気ガスによる中国国内の大都市での肺炎の発生増加が懸念されている。
現在、中国政府も重い腰をやっと持ち上げ、本格的な対応策を講じるため動き出したようであるが、ここで公害を経験している日本としてもっと協力できることはないのか、日本の環境先進技術を用いて貢献できることはないのか、隣国としてはそろそろ考えていかなくてはいけない時期に来ているように思う。現在日本人が認識しておかなくてはいけないことは、中国の環境問題はそのまま日本の環境問題に発展する可能性が大きいということで、日中双方政府間の早期対応に期待するものである。
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