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2024-06-21 00:00
都知事選に考える・・都政の病根、日本の地方自治の闇
舛添 要一
国際政治学者
東京都の人口は1400万人であり、2024年度の一般会計の予算規模は8兆4530億円、それに特別会計と公営企業会計を合わせた都全体の予算規模は16兆5584億円である。これは、スウェーデンの国家予算に匹敵する。また、都の職員定数は3万8289人である。 これだけの大都市の首長となると、一国の大統領並みの権限を持つ。国の専管事項である外交や国防、司法についての権限がないだけである。しかし、都政の実態は、そのような巨大さ、華麗さとは対極的な泥臭い闇が広がっている。私は、国会議員、閣僚を経験してから都知事になった。霞ヶ関・永田町から新宿に降り立つと、そこは全く別の世界であった。同じ政治・行政の世界なのに、ここまで違うのかと愕然としたものである。国政で発揮できた能力も、有効だった手法も全く通じない。その理由は様々である。都議会議員や都庁職員の能力や資質の問題もあるが、制度設計そのものにも機能不全の原因がある。
現代民主主義国家では、イギリスや日本のように議院内閣制を採用している国もあれば、アメリカのように大統領制の国もある。日本の地方政治は大統領制であり、首長が有権者の直接選挙によって選ばれる。内閣総理大臣は、有権者が直接選ぶのではなく、国会の多数派が選ぶ。地方議会の議員も住民の直接選挙によって選ばれる。 たとえば、都議会議員は「二元代表制」という言葉を声高に叫ぶ。つまり、「知事と同じように、自分たちも有権者に直接選ばれた代表なのだから知事と同等の権力を持っているのだ」と豪語するのである。そこから来るのは、知事は利用すべき対象であり、邪魔になれば捨てれば良いといった奢りである。
予算案にしても議会の承認がいるし、条例も議会が反対すれば可決されない。そこで、知事の目の届かないところで、都議会議員たちは都庁の役人を呼びつけ、様々な要求を出したり、陳情したりする。とりわけ、議会の多数派に属する議員の力は絶大である。 潤沢な税収のある東京都では、官僚機構を意のままに動かせれば、配分できる利権は山ほどある。それが、政治資金や票に変わっていく。役人にしても、自らの好む方向に議会が舵を切ってくれれば万々歳である。こうして、政官業の癒着が生まれるのである。さらには、市区町村長との調整も必要となってくる。都知事は、彼らに配分する予算を持っているので、ほとんどの問題がカネの力で片付くが、案件によっては対立することもある。首都のリーダーとして、国との調整もまた、都知事の大事な仕事である。
国会では、自民党の場合、全議員が参加できる政務調査会があり、多くの専門部会があって、そこで政策の審議をする。官僚も、そこに出て、政府提出法案を説明し、与党の承認を得る。このように、政策決定過程ができあがっている。ところが、都政の場合には、それがない。そこで、フィクサーのドンと話を詰めるようなことになる。国政の自民党のような透明性のある仕組みができていないのである。
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