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2024-07-12 00:00
次の「クアッド」首脳会議は、いつ、どのように開催されるのか
篠田 英朗
東京外国語大学大学院教授
インドのモディ首相のロシア訪問が、大きなニュースになっている。大国の指導者と会った際には恒例であるハグ(抱擁)を、プーチン大統領との間で行う姿を捉えた写真が、世界を駆け巡った。プーチン大統領は、ロシア最高位の聖アンドレイ勲章を授与した。ピョートル大帝が300年以上前に創設した勲章で、外国人では2017年の中国の習近平国家主席に続いて4人目だという。モディ氏は「インドの14億人に与えられた栄誉であり、インドとロシアの戦略的パートナーシップが認められたものだ」とコメントした。
インドは21世紀の超大国である。少なくとも国際機関が提示しているデータはそれを示している。そして、世界の数多くの人たちが、そのように信じている。しかし日本では、頑固としてそれを認めない立場を取る人たちが、むしろ人気を得ている。「インドは大国ではない」、「インドは民主主義国ではない」、「インドはもう経済成長などしていない」・・・、といった論調が、人口に膾炙している。IMF(国際通貨基金)が、2025年にインドのGDPが日本のGDPを追い抜く、という予測を発表した、その矢先に、日本では「インドなんて・・・」の論調が流行している。第二次安倍政権の外交政策の功績としてまず特筆されるのが、FOIP(自由で開かれたインド太平洋)であり、「クアッド」であった。これは突き詰めれば、冷戦時代からのアメリカと日本とオーストラリアというアメリカの同盟国のネットワークに、21世紀の超大国インドを関わらせるものだった。安倍首相とモディ首相は意気投合し、文明論を語り合い、日本とインドの二国間関係は飛躍的に発展した。インドに接近する機会を探りあぐねていたアメリカは、「クアッド」を中核とした「FOIP」に飛びついた。安倍首相がアメリカなどでも高く評価されているのは、たとえばインドとの継続的な協議フォーラムの形成というアメリカだけではなしえなかった外交枠組みを、安倍首相のイニシアチブで、アメリカの利益にもなる形で、切り開いてくれたからだ。
その後、菅首相は、安倍路線を継承する度合いが高かったように思う。だが、岸田首相は、「クアッド」や「FOIP」に関心があるようには見えない。欧米諸国の歓心を得ることには成功しているが、軍事費増強やNATOとの連携強化を次々と進め、ウクライナに巨額の支援を約束しているが、他の事柄には「グローバル・サウスは大切です」といった抽象的でつかみどころのないことを大雑把に言うだけで、何ら戦略的な発想を感じさせることを語らない。何よりも、外交政策を〇〇円といったお金の額面で表現する場面が目立ちすぎる。理念がなく、額面がドル換算で目減りし続けるのも、寂しい。残念である。欧米諸国に日本の価値を売りつけるためにも、実は「FOIP」の深化こそが、最も効果的だったはずだと思っている。
クアッド首脳会議は、2021年9月にワシントンDCで第一回目が開かれた。その後、22年に東京で、23年にシドニーで、5月に開催されてきた。今年は、インドを議長国にして開催されるはずだが、まだ予定が公表されていない。インドで総選挙があったことが大きかったとは思う。しかし選挙後にモディ首相はまずモスクワを訪問した。10月にはロシアでBRICS首脳会議が開催される。11月の大統領選挙に向けて、バイデン大統領の予定は選挙対策中心になっていくだろう。果たして次回クアッドは、いつ、どのように開催されるのか。心配である。
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