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2024-07-24 00:00
トランプ前大統領の暗殺未遂事件
村上 裕康
ITコンサルタント
選挙戦の近況
大統領選挙2024は、トランプの暗殺未遂事件を挟んで情勢は大きく変化している。テレビ討論会を受けて、バイデンの健康状態が問題になると、トランプの優勢に傾いた。その後、トランプ暗殺未遂事件で、トランプは奇跡的に助かると、トランプの人気は高まった。そのままの勢いで共和党大会を迎え、トランプは共和党の大統領候補指名を受けた。一方、テレビ討論会の失敗で、バイデンに対して大統領候補から退場を求める声が大きくなった。全国民主党大会(8月19日~8月22日)を間近に控えて、バイデンは大統領候補をカマラ・ハリスに譲った。テレビ討論会直前の世論調査によると、2024におけるトランプとバイデンの支持率は拮抗していた。ウェブサイト“270towin”における世論調査(polling average by state)によると、全米ではバイデン(44%)VSトランプ(45%)と拮抗している。各州の世論調査によると、勝敗を決するといわれるスイングステート(激戦州)ではトランプがバイデンを若干リードし、選挙人の数ではトランプが優位にある。アリゾナ州(Biden42% vs Trump47%)、ジョージア州(Biden41% vs Trump45%)、ミシガン州(Biden44% vs Trump44%)、ノースカロライナ州(Biden43% vs Trump46%)、ペンシルバニア州(Biden44% vs Trump47%)、ウィスコンシン州(Biden46% vs Trump47%)
トランプとバイデンのテレビ討論会
6月27日、トランプとバイデンの米国大統領選挙に向けたテレビ討論会が行われた。バイデンは討論会でしどろもどろになり、口ごもって意味不明の言葉を口にする場面さえ見られた。「完全な惨事」、「メルトダウン」とする声が民主党員の中からも漏れた。CNNの世論調査は67%がトランプの勝利とし、トランプの優勢が明らかになった。バイデンでは大統領選は戦えないと、大統領候補から降りることを促す圧力が強くなった。民主党の大口献金者は献金を控えるとバイデンに撤退を促し、民主党色が強い大手のマスコミもバイデンに撤退を促している。また、国会議員選挙を間近に控える多くの民主党議員は、これでは戦えないとバイデンの撤退を促している。しかし、バイデンは妻ジル・バイデンや長男ハンター・バイデンの後押しもあって、自ら大統領候補に留まることに固執した。しかし、全国民主党大会(8月19日~8月22日)を間近に控え、オバマ元大統領やペロシ元下院議長からも退任を説得され、バイデンは期日まで大統領職を果たすとしながら、大統領候補から退くことを表明した。カマラ・ハリスがバイデンの後継に指名され、党内で必要な数の代議員の数を得たことから民主党大会で大統領候補に指名される見通しになった。大統領選にもまして重要なのが、連邦議会の選挙である。上院議員の任期は6年で、大統領選で定数100人のうち3分の1の24議席が改選される。現在民主党議員が51人、共和党議員が49人であるが、民主党の23議席、共和党の11議席が改選の対象になる。従って、選挙で共和党の議席が過半数をとる可能性が高い。上院は人事案の承認権を持ち、共和党がDOJ(司法省)、CIA、FBI、DHS(国土安全保障省)・・・の長官を承認する権限を持つ。上院で共和党が多数派になれば、トランプ政権は人事の掌握をしやすくなる。下院議員の任期は2年で、大統領選で定数435議席の全議席が改選される。現在民主党議員が213人、共和党議員が220人、欠員2人である。下院は予算や法案を先に審議することができ、大統領を弾劾訴追する権限を持つ。また、各種小委員会の委員長は多数党から選ばれ、多数党が委員会の進行を主導する。“270towin”における世論調査(Crystal Ball 2024 House Ratings)によると、共和党が若干優位にある。トランプが大統領に選ばれ、上下両院の議会選挙で民主党が少数党になると、政治の主導を完全に共和党に奪われることになる。
トランプ前大統領の暗殺未遂事件
7月13日、ペンシルバニア州のバトラーで開かれた選挙集会で、トランプは演説中に銃撃を受けた。銃弾はトランプの右耳上部を貫通し、トランプはかがんで身を低くしてさらなる銃弾から身を守った。銃弾が僅か1インチずれていたら、殺されていたという暗殺未遂事件である。数発発射された銃弾で、群衆の一人が死亡し、二人が重傷を負った。犯人は、演説会場150mほどの距離にある建物の屋根からトランプをライフルで狙撃するが、トランプは奇跡的に助かった。犯人はシークレットサービスのスナイパーにより射殺された。FBIによると、犯人は20才のトーマス・マシュー・クルックスであると特定した。しかし、犯行の動機やバックグラウンドは明かされていない。トランプを狙った銃弾はトランプの耳をかすめ、演壇にうずくまるトランプをシークレットサービスは押さえ込み、トランプは耳から血を流しながら立ち上がりこぶしを空に振り上げて「戦え!」「戦え!」と群衆を鼓舞した。悲鳴をあげてパニック状態にあった会場の支持者達は「USA」コールで応え、会場は異様な熱気に包まれた。アメリカ国旗を背に、血を流しながら右のこぶしを空に突き上げるトランプの姿は写真に撮られ「米国の強い指導者」を映し出した。トランプの精神力と使命感に感動しない米国人はいないだろう。銃弾が耳をかすめ、気が動転している時に、米国旗を背に立ち上がり、こぶし振り上げるという行為は誰もができるものではない。トランプはこぶし突き上げ、「戦え!」「戦え!」と叫んで群衆を鼓舞した。
この暗殺未遂事件を巡って、シークレットサービスの警護に疑問が上がっている。容疑者はイベント会場からわずか130m離れた平屋の建物の屋根から発砲している。通常1マイル以内の銃の持ち込みは金属探知機で阻止されるはずであるが、どうしてライフル銃が持ち込まれたのか。BBCは目撃者の話として、発砲の数分前に銃をもった男が屋根の上にいるのを見つけ、警察に通報したという。シークレットサービスは30分くらい前に暗殺者の姿を確認していたという話もある。また、暗殺者は発砲後すぐに、シークレットサービスのスナイパーに射殺されるが、スナイパーは暗殺者がトランプを銃撃する瞬間を待ち、それから暗殺者を撃ち殺したとする話もある。NBCニュースは「イベント会場の隣の建物の屋上がセキュリティの脆弱性であると特定していたが、事件を防げなかった」と報道した。犯人が射撃をした建物が、なぜシークレットサービスの警戒の対象から抜け落ちていたのかも不思議な話である。マイク・ジョンソン下院議長は、トランプ暗殺未遂事件におけるシークレットサービスの不手際を非難して「議会は徹底的に事件を調査し、セキュリティのどこに欠陥があったのかアメリカ国民は知る権利があり、徹底的に調査する」と語った。下院監視委員会の委員長ジェームズ・カマーはシ-クレットサービスのキンバリー・チートル長官(女性)を7月22日の公聴会で証言するように求めた。公聴会において、チートルは暗殺未遂事件の発生はシ-クレットサービスの失敗であったことを認めた。共和党および民主党からも辞任の要求があり、チートルは辞任に追い込まれた。ジョシュ・ホーリー上院議員によると、内部告発者の話として、この日のシークレットサービスのリソースは限られ、シークレットサービスのかわりに国土安全保障省の補充の捜査員が充当されたことを明かした。トランプ陣営はシークレットサービスの増強をマヨルカス長官にたびたび要求してきたが、そのたびに拒否されてきた。シークレットサービスが足りなく、警備が手薄になった可能性はある。下院国土安全保障委員会のグリーン委員長は、暗殺未遂事件に関する国土安全保障省の文書を要求した。国土安全保障省のマヨルカス長官は議会での証言を拒んでいる。
副大統領候補に指名されたバンス上院議員は、バイデンと民主党の選挙運動におけるレトリックがトランプの暗殺未遂に繋がったと指摘した。BBCの報道によると、暗殺事件の1週間前に行われた選挙運動で、バイデンは「私の仕事はただひとつ、それはドナルド・トランプを倒すこと。自分はそれができる最高の人物だ。討論会の話は終わりだ、トランプを標的の中心(bullseye)に据える時がきた」と発言した。バイデンの呼びかけが犯行の引き金になった可能性もある。Politicoの報道によると、バイデンはその後の発言で「トランプを的に据えるという呼びかけは間違いであった」と修正している。テレグラフ紙は、「大統領免責特権とは何か?トランプ暗殺に使える免罪符」という記事を載せている。最高裁判所はトランプ元大統領としての役割の下で刑事訴追から部分的に免責されるという判決を下した。1月6日の議会襲撃事件に関連してトランプは起訴された。最高裁のこの判決により、議会襲撃事件に関連してトランプの行動が免責特権が適用される公務にあたるのかどうかが問題になる。ただ、トランプを起訴した議会襲撃事件関連の裁判は、起訴したジャック・スミスの資格が問われている。ジャック・スミスは特別検察官としての地位が憲法違反であるとして、トランプを起訴した機密文書事件はアイリーン・キャノン判事によって棄却された。最高裁は大統領の行為が公務にあたる場合、大統領の免責特権は認められるという判決を、保守派判事の賛成9に対してリベラル判事の反対3で認めた。反対したリベラルのソニア・マイヨール判事は、この判決は大統領に政敵を暗殺する権限を与えるものだと疑問を唱えた。バイデン大統領が「民主主義の脅威たる政敵」を暗殺したとすると、それが大統領の公務として認定され、免責特権は適用されるのだろうか?
陰謀論
トランプの暗殺未遂事件を巡って、ネット上では様々な情報が飛び交っている。ペンシルバニアの選挙集会で暗殺未遂事件が起きた当日、シークレットサービスの不足を国土安全保障省の捜査官で補充した。しかし、同じ日に近くのピッツバーグで行われたジル・バイデンの選挙イベントにシークレットサービスを配備したという。手薄になった警備がトランプの暗殺未遂事件に繋がったという疑いもある。また、トランプの狙撃犯は建物の屋根の上に30分くらい前に目撃され、シークレットサービスもその存在を確認していながら暗殺未遂を防げなかったという話もある。数多くの目撃証言が寄せられる中で、FBIとDHSは事件を捜査中である。米国の資産運用会社APW(オースティン・プライベート・ウェルス)がトランプのメディア会社TMTGの株1200万株を事故の前日に空売りしていたという。トランプが暗殺されていたら、数十億ドルの利益を得ていたという。APWは空売りをしたとの容疑を否定し、事務上のミスによるものだった主張している。SEC(証券取引等監視委員会)は調査中である。CA Club India によると、トランプの死はナスダックとダウを1週間暴落させ、事前に知っていたら7000億ドルから1兆ドルの利益を上げていたと推定している。ネットに飛び交う情報が偽情報あるいは誤情報である場合、「暗殺未遂が仕組まれたものではないか」という疑いは陰謀論ということで片づけられる。また、ネットに出回る情報が真実だったとしても、FBIやDHSなどの法執行機関が政治的な配慮で動き、情報が精査されずに、闇の中に葬られるということも考えられる。この場合、「暗殺未遂が仕組まれたものではないか」という疑いは陰謀論として片づけられる。ケネディ暗殺事件、911同時多発テロ、2021年1月6日の議会襲撃事件、COVIDの中国起源説、これらはいずれも真相が明らかにされないまま陰謀論として片づけられている。これらの事件が陰謀論で片づけられることに疑問を持つ人も多くいるが、真相は闇の中である。トランプの暗殺未遂事件も、真相が明かされないまま陰謀論で片づけられる公算が大きい。
民主主義の脅威
民主党政権はトランプが選ばれたら「米国の民主主義は崩壊」するとバイデン政権は喧伝してきた。2021年1月6日の議事堂襲撃事件も、トランプによる「民主主義の攻撃」として繰り返し語られてきた。2020年大統領選挙で、選挙不正を抗議する暴徒が議会に乱入するテレビ報道の映像が映り、生々しく記憶に焼き付いている。トランプが選挙結果を覆そうと暴動を扇動し、暴徒が議事堂に乱入し、議事堂襲撃事件が起きたと信じられている。この事件でトランプは抗議集会を開いて選挙の不正を抗議したが、暴動を扇動してはいない。抗議集会に集まった群衆の一部は議会に乱入したが、ビデオに撮られた映像によると、多くの暴徒は議事堂警察に誘導されて乱入した。紙面の都合上、詳しく触れないが、議事堂襲撃事件はFBIが関与して企てられ、演出された罠であった。FBIが自ら認めないかぎり、この主張は陰謀論の域を出ない。ただ、ほとんどの共和党員はこの事件を「トランプが選挙結果を覆すために企てた議会襲撃事件」とは思っていない。思い起こすと、トランプは2016年の大統領選の頃から、「民主主義の脅威である」と絶え間なくターゲットにされてきた。ロシアゲート事件では、「大統領選挙でロシアと共謀があったという疑惑」をかけられたが証拠が捏造された。ウクライナ疑惑は、「ウクライナのガス会社における汚職捜査をめぐって、トランプがゼレンスキーに汚職捜査をすすめるよう圧力をかけたという疑惑」であるが、バイデン親子がこの汚職捜査に関与していた。トランプはウクライナ疑惑で弾劾裁判にかけられ、無罪になっている。そして、2020年大統領選挙における議会襲撃事件である。議会襲撃事件をめぐって、トランプは弾劾裁判にかけられ、無罪になっている。議会襲撃事件に関連して、トランプは大統領選挙の結果を転覆しようと共謀した罪で起訴され、現在係争中である。ただ、裁判が始まる前に、大統領免責特権をめぐって最高裁から地方裁に差し戻され、議会襲撃事件の裁判はまだ始まっていない。2024年の大統領選挙では、トランプは4つの刑事事件で起訴され、現在係争中である。不倫口止め料裁判、機密文書持ち出し裁判、議事堂襲撃関連裁判、ジョージア州選挙介入裁判の4つで係争中である。不倫口止め料裁判では有罪判決を受けている。残りの3つの訴訟では、1つは棄却され、2つが無期限に中断されている。一連の事件で、政権による司法の武器化が問題になっている。本来的に、司法は党派にかかわらず中立であるべきであるが、バイデン政権では政府の意向を反映して敵対する勢力をターゲットとして、DOJやFBI等の法執行機関が事件に関与している。ここに、米国の司法の問題がある。バイデン政権は「トランプを民主主義の脅威」として喧伝してきたが、司法を司る官僚の党派性こそ「民主主義の脅威」である。トランプは大統領に選ばれたら、官僚機構にまず手をつけるといわれている。いわゆるディープステート(闇の政府)をもう少し見通しがよいものに整理するつもりでいる。民主党政権がトランプを「民主主義の脅威」と恐れる理由はここにある。
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