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2024-09-23 00:00
拡大するヨーロッパの反ユダヤ主義
舛添 要一
国際政治学者
ヨーロッパをはじめ世界中で反ユダヤ主義の勢いが増している。昨年10月7日にハマスが越境攻撃で多数のイスラエル市民を殺傷したり人質にとったりしたため、イスラエルがガザに侵攻し、反撃した。その結果、すでにガザでは4万人を越える死者が出ている。これが、反イスラエル感情を拡大し、ユダヤ人攻撃につながっている。7月24日朝、南フランスのモンペリエ近郊のシナゴーグ(ユダヤ教会堂)で2台の車などが放火され、ガスボンベが積載されていた1台が爆発した。現場に急行した警察官が負傷したが、大事には至らなかった。シナゴーグには5人がいたが、全員無事だった。
容疑者は、パレスチナを支援する33歳のアルジェリア人で、モンペリエから50㎞離れたニームで身柄を拘束された。アタル首相(当時)は、反ユダヤ主義によるものだとして、糾弾した。フランスは、ヨーロッパで最大の50万人のユダヤ人コミュニティを包含する国であるが、昨年のガザでの戦闘開始以来、反ユダヤ主義的な事件が相次いでいる。ダルマナン内相は、国内のシナゴーグやユダヤ人学校などのユダヤ人関連施設の警備強化を指示した。ドイツ西部のゾーリンゲンは刃物の産地として有名であるが、市の創立650周年を祝う祭典「多様性フェスティバル」が開催されている中、8月23日夜、男が刃物で来場者を襲い、3人が死亡し、8人が負傷した。犯人は自首したが、26歳のシリア人で、IS(イスラム国)が「ISの戦士が実行した」とする犯行声明を出した。パレスチナなどあらゆる場所にいるイスラム教のために、キリスト教徒に報復したという。
この男は、2022年12月にドイツに来て難民申請し、滞在が認められていた。事件後に、ドイツでは政府の難民対策への批判が強まっており、今後は難民の受け入れを厳格化する方針になりそうである。ハマスの最高指導者イスマイル・ハニヤが、7月31日にテヘランで暗殺されたため、イランはイスラエルに報復することを宣言した。しかし、紛争のエスカレーションは望んでおらず、ハマスの要求が満たされる形で停戦が実現すれば、報復は差し控えるという方針も明らかにした。
ところが、8月25日、レバノン南部を拠点とするシーア派組織ヒズボラがイスラエル北部の軍事施設11カ所を320発以上のロケット弾で攻撃した。ヒズボラの攻撃を事前に察知したイスラエル軍は、ヒズボラが攻撃を開始する前に、ヒズボラの軍事拠点を空爆している。9月18日、レバノンではポケベルなどの通信機器に爆弾が仕込まれており、それが爆発して多数の死傷が出た。ヒズボラは、イスラエルが実行したと言う。ガザでの戦闘が長引けば長引くほど、世界中で反ユダヤ主義が拡大する。アメリカは大統領選挙一色であるが、ガザでの戦争を終わらせる努力を強化すべきである。
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