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2024-10-16 00:00
(連載1)「アフリカの角」地域に立ちこめる暗雲
篠田 英朗
東京外国語大学大学院教授
日本では、アフリカのニュースが少ない。もちろん、よく探してみたら、どこかで誰かが扱っているのが見つかったりすることはある。しかし10月10日にエリトリアの首都アスマラで開催されたエジプト、ソマリア、エリトリアの三カ国の首脳が集まった会議については、日本では文字通り全く報道されなかった。検索をかけても、全く出てこない。かなり徹底している。この三カ国の国家元首がエリトリアという「アフリカの北朝鮮」の異名を持つ国に集まり、安全保障面での協力を協議した。これは、東アフリカあるいは「アフリカの角」と呼ばれる地域で、エチオピア包囲網が形成されていることを意味している。共同声明では、地域内諸国の主権・独立・領土的一体性が尊重されなければならないことが謳われた。これはエチオピアに対するけん制である。
エチオピアは人口1億2千万人を抱えるアフリカの地域大国の一つである。アフリカ連合(AU)の本部が首都アディスアベバで置かれていることでも有名だ。ヨーロッパ列強の植民地化に最後まで抗して独立を守っていた国としての威信を持つ。16万人以上の兵力を擁して空軍力まで持つ国は、アフリカでは珍しい。しかしエチオピアの軍事力は、エジプトと比較できるものではない。エジプトは34万人の兵力を持ち、アメリカからの軍事援助などもふまえて、近代的な武器装備を持つ。実力のランクが違うと言えるだろう。エチオピアとエジプトは、「大エチオピア・ルネサンス・ダム(GERD)」の建設・稼働をめぐって、険悪な状態が続いている。ナイル川下流のエジプトが、上流のエチオピアに建設されたダムによって水流に悪影響が出ると主張している。エチオピアはその主張の妥当性を否定しているため、折り合いがつかない。
幸いなことに、エチオピアとエジプトは陸続きに接した隣国ではない。そのため偶発的事態で武力衝突に至る可能性は抑えられてきている。しかし両国の間に位置するスーダンが、昨年4月から激しい内戦に突入している。これにともなってエチオピアとスーダンの間の国境地帯での軍事的小競り合いが絶えない。スーダンと接するエチオピアの国境地域は、エチオピア連邦の仕組みで言うと、アムハラ州が位置するのだが、エチオピア連邦政府とアムハラ州軍が、民族問題などに起因する対立で、事実上の内戦と言ってよい軍事的衝突を繰り返している状態にある。非常に荒れている地域だ。
エチオピアとソマリアの関係は、今年1月に劇的に悪化した。エチオピアが、ソマリア領土内の事実上の国家であるソマリランドと、港湾使用(軍港を作る予定と考えられている)の協定を結んだ。その協定に、見返りとしてエチオピアが将来ソマリランドを独立国として認めることをほぼ約する条項があったため、首都モガデシュ近辺を実効統治するソマリア連邦政府が猛然と抗議したのだ。(つづく)
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