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2024-12-17 00:00
石破とトランプはプロテスタントのつながり
舛添 要一
国際政治学者
かつて、アメリカはWASPの国だと言われた。WASPとはWhite(白人)、Anglo-Saxon(アングロ・サクソン)、Protestant(プロテスタント)の頭文字である。建国以来、アメリカを支配してきた集団である。第二次世界大戦後は、人種的にも宗教的にも多様性が増し、もはやWASPという表現が使われることはなくなった。黒人のオバマ大統領が誕生し、ケネディ大統領もバイデン大統領もカトリック教徒である。
しかし、宗教的にはプロテスタントが最大宗派である状況は続いている。2020年の統計によると、プロテスタントが42%、カトリックが21%、無宗教が18%、モルモン教が2%、ユダヤ教が1%、イスラム教が1%、ヒンドゥー教が1%、仏教が1%、正教会が0.5%である。キリスト教が約8割であり、建国の経緯からもアメリカは「キリスト教の国」である。なかでも、プロテスタントが主流である。プロテスタントの一宗派であるキリスト教福音派はアメリカ国民の4分の1を占めるアメリカ最大の宗教勢力である。トランプは、大統領在任中に連邦最高裁に3人の保守派判事を送り込んだ。その結果、保守派判事が過半数を占め、2022年6月、妊娠中絶を憲法上の権利と認めた判決(ロウ対ウェード判決)を49年ぶりに覆した。トランプは、これは保守派の判事を任命した自分の業績だと、福音派にアピールした。
また、ゴラン高原のイスラエル支配を認め、米大使館をエルサレムに移したことは、イスラエルのみならず、福音派の人々を喜ばせることになった。福音派は、「ユダヤ人国家イスラエルは神の意志で建国された」と考えており、イスラエルを支援している。妊娠中絶反対、イスラエル支持という2点について、トランプが大きな成果を上げたとして、その功績を福音派は高く評価している。今回の選挙では、福音派の8割がトランプに投票している。安倍元首相は、ゴルフを通じてトランプ大統領との友情関係を強め、日米関係の緊密化に貢献した。石破首相は学生時代にゴルフ部に属していたとはいえ、ゴルフが趣味だという話は聞かない。私も国会議員時代に、石破とゴルフをしたことはない。そのため、石破は、トランプと良好な関係を築けないのではないかという心配の声も聞かれる。
しかし、「キリスト教の国」アメリカでは、ゴルフよりも宗教、とりわけキリスト教が重要である。石破家は曾祖父の時代からキリスト教徒である。石破もトランプも堅信礼を受けた長老派の信者である。長老派は、16世紀の宗教改革者ジャン・カルヴァンの流れを組むプロテスタントである。トランプは、「今は無教派のキリスト教徒」と自称しているが、それは、選挙で福音派の票を獲得するためである。石破がトランプと会談する時に、自分がプロテスタントで、長老派の信者であることを伝えれば、トランプは必ず心を開いてくれるはずである。ゴルフよりも遙かに強力な武器である。神が、トランプを、アメリカを、そして日米関係を祝福してくれることを共に祈ることができる盟友となろう。
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