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2025-01-22 00:00
混迷する韓国の政治
舛添 要一
国際政治学者
12月3日夜、韓国の尹錫悦大統領は「非常戒厳」を宣告し、それ以降、韓国政治の混乱が続いている。1月15日には、尹錫悦大統領が拘束された。現職大統領の拘束は前代未聞のことである。文在寅政権の下で、日韓関係は悪化した。文在寅が実行した対日強硬策の背景にあるのは、朝鮮文化の基調をなす「恨(ハン)」の思想である。「恨」とはどういうものなのか。これは、単なる恨み、辛みではなく、悲哀、無念さ、痛恨、無常観、優越者に対する憧憬や嫉妬などの感情をいう。「ハン」の具体的な対象は、「徴用工」や「女子勤労挺身隊」にとっては、植民地支配をし、朝鮮人を「強制連行」した日本である。まさに、その「恨」が、怨念や被害妄想につながる。
次に指摘したいのは、この「恨」の思想は、政権交代のときに、前政権に対しても浴びせかけられる。韓国では、政権交代があると、前政権のトップは刑務所行きになったり、自殺を迫られたりという悪しき習慣がある。日韓合意をはじめ、前政権が行ったことは全て悪だということになるのである。これを「先王殺し」という。「恨」の思想と、「先王殺し」が続く限り、日本との関係改善は困難であるが、今回の尹錫悦の弾劾騒ぎで、またその悪しき伝統がよみがえるのではないか。尹錫悦は、なぜ無謀とも言える戒厳令を布告したのか。韓国のマスコミでは、保守系のYou Tuberが拡散するSNSの内容を鵜呑みにしたからだと言われている。
尹錫悦は、戒厳令を出した理由として、与党が敗北した4月の総選挙で不正が行われたからだという。それは、野党の「共に民主党」が大勝したのは、北朝鮮が操ったからだという韓国版「ネトウヨ」の主張と同じである。尹錫悦は、北朝鮮によるハッキング攻撃を行われたのに、選挙管理委員会が調査を拒否したので、同委員会に戒厳軍を突入させたという。国会よりも先に、まず選管に軍を入れたのである。12月12日の国民に対する談話の中で、尹錫悦は、「システム装備の一部だけを点検しましたが状況は深刻でした。いくらでもデータ操作が可能であり、ファイアウォール(安全対策)も事実上、ないに等しい状態でした。暗証番号もとても簡単で『12345』のようなものでした。民主主義の核心である選挙を管理する電算システムがこんなにでたらめなのに、果たして国民が選挙結果を信頼できますか?」 と述べている。
中央選挙管理委員会は、北朝鮮がハッキングした痕跡は見つからなかったと反論しているが、尹錫悦は、それを信じず、点検が不十分だと信じているようだ。真実はどこにあるかは不明だが、一国の最高指導者までがSNS上の陰謀論に毒されるのは深刻な事態である。「恨の思想」、「先王殺し」に加えて、SNSの猛威もまた、韓国の新たな足枷となっているのかもしれない。
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