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2025-02-09 00:00
(連載2)USAID(国際開発援助庁)はなぜ狙われるのか
篠田 英朗
東京外国語大学大学院教授
NEDは、そもそもその存在意義が、世界各国における(アメリカ流の)民主主義の普及の促進だ。USAIDも、「民主化支援」を重視している点で、他国の開発援助機関と比べても、際立った特徴を持つ。開発援助をする際に「内政干渉」の疑いを持たれることを警戒するのであれば、「民主化支援」は、重視されないだろう。「民主化支援」は、その性格上、「内政干渉」と言われても仕方がない性格を持たざるを得ないからだ。
NEDやUSAIDは、「内政干渉」の批判に応じず、断固として「民主化支援」をするアメリカ外交の象徴とも言ってよい存在である。特に「民主主義諸国vs.権威主義諸国」の世界観を掲げ、その二項対立の世界の中で、アメリカが主導する「民主主義陣営」が勝利する、という政策目標を推進していたバイデン政権では、NEDやUSAIDは、重要な役割を担っていた。かなりわかりやすく、敵対勢力からは「ディープ・ステート」と非難される「民主化支援」の一大勢力を形成していたのである。
バイデン政権期にUSAIDの長官を務めていたサマンサ・パワー氏は、民主党タカ派の最右翼と言って良い存在である。オバマ政権時に、やはり国際介入主義のタカ派の急先鋒であったスーザン・ライス氏を継いで国連大使を務めた際には、アメリカの国際介入タカ派の立場を象徴する人物として知られていた。パワー氏が長官を務めていたUSAIDが、世界に(アメリカ流の)民主主義を輸出するために奔走する組織でなくなるはずはなかった。むしろかなりあからさまに「民主化支援」重視の方向に舵が切られていた。アメリカ国内の「反トランプ」勢力までUSAIDが支援していたというので、トランプ政権発足直後の「粛清」対象に、USAIDが選ばれてしまった。しかしこれも「民主主義vs権威主義」の世界観の中で、「バイデン政権=民主主義、トランプ氏=権威主義」という二元論もあてはめてしまい、アメリカ合衆国の「民主化支援」をしていたということである。
ウクライナへの多額の支援を主導していた一大勢力がUSAIDであることも事実である。その中で「民主化支援」の名目で、ウクライナのメディアや、ウクライナ擁護の論陣をはっていた欧米メディアに、多額の援助をUSAIDが提供していたことも、今や問題になっている。しかしこれも「ウクライナ支援者=民主主義、ロシア=権威主義」の二元的世界観に基づき、「民主化支援」の「開発援助」を行っていた、ということである。バイデン政権のときには正義であった「民主化支援」が、トランプ政権では正義ではなくなった。これが端的に言って、今起こっていることである。日本でも、相変わらずSNSで「陰謀論」撲滅主義者と、「ディープ・ステート」撲滅主義者が、戦っている。感情的に過熱したやり取りも見られるが、それは非生産的である。こんなときこそ、冷静に、現代の国際情勢を見る目を失わないようにしたい。(おわり)
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