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2007-12-22 00:00
全く不明な日本の国家戦略
田久保忠衛
杏林大学客員教授
内憂外患こもごも至る、と言っていいと思う。福田政権の支持率は急速に落ちているようだが、日本の指導者に対する国際的評価も高いはずがない。目的、戦略、戦術は全くわからず、国際社会で日本は一体どのような役割を演じようとしているのか、あるいは演じないと決めているのか、意図的に何も言わないのか、が分からないからだ。
福田首相は就任直後から「日米同盟とアジア政策との共鳴」という表現を使ってきた。日米同盟を最重視した安倍前首相は最初の訪問先を中国としたのに対し、米国との同盟の必要性をさほど声高に主張して来なかった福田首相は、最初にワシントンを訪れた。ブッシュ大統領との会談で、この「共鳴」という言葉を使用したが、大統領がどれだけ理解したかは疑わしい。歴代の日本の首相は訪米するたびに日米同盟の「維持」とか「強化」を繰り返すので、米側はうんざりするだろうが、それに加えて「共鳴」とは理解しにくくて当然だ。
11月に福田首相のあとサルコジ仏大統領、メルケル独首相が相次いでブッシュ大統領と会談した。福田首相と欧州の二指導者の訪米で異なる点がいくつかある。第一は会談場所だ。福田首相はホワイトハウス、サルコジ大統領は米国建国の父ジョージ・ワシントンの居所だった名所のマウント・バーノン、メルケル首相はブッシュ大統領が自ら「最も親しい友人を招く」と言っているテキサス州クロウフォードにある別荘だ。第二は会談時間だ。他の二人と違って福田首相だけは1時間という短時間の会談だった。第三はブッシュ大統領が記者団を前に欧州の二指導者に最大限の表現を使って歓迎の意を表明したのに対し、福田首相には素っ気なかった。第四はサルコジ大統領とメルケル首相がイラン、イラク、コソボ、レバノン、中東和平会談など当面の重要な国際情勢を話し合ったのに対して、福田首相は日本が関係する北朝鮮、拉致、牛肉問題などスケールの小さいテーマを話し合った。
拉致は我々にとってテロと同じほど切実な問題だが、米国など他国がどのように感じているかは別問題だろう。イランより北朝鮮の方が重い問題だとわれわれ日本人は考えがちだが、世界はそう見るかどうか。イランは隣のイラクにおけるシーア派武装集団サドル派、シリア、ヒズボラ、ハマスと密接な関係を持つ。しかも北朝鮮と違って中東有数の産油国だ。イランが核武装して中東の覇権を握った場合の影響力は、北朝鮮との比ではない。それはともかく「面接委員」ブッシュ大統領の目にサルコジ、メルケル両人と福田の間に差がつかなかったか。
中国の胡錦濤体制がいよいよ足場を固めて前進し、ロシアのプーチン大統領は来年三月以降も首相として辣腕を振い、韓国にも米国を重視する李明博氏が大統領に当選した。三ヶ月後には台湾の新総統が決まる。日本だけは何をしようとしているのか、全く不明である。
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