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2008-01-09 00:00
日中首脳、「アジア共同体」論議が不可欠
鍋嶋敬三
評論家
2007年末の福田康夫首相の中国訪問は首脳間の信頼関係の強化では意義があった。小泉政権下の険悪な政治関係が2006年10月の安倍晋三首相の訪中で一気に好転した。その流れを引き継いだ福田首相と故錦濤国家主席、温家宝首相ら中国首脳との会談を通じて「アジアと世界の安定と発展への日中の貢献」という認識で一致、「戦略的互恵関係の強化」を確認した。福田首相にとっては「日米同盟とアジア外交の共鳴(シナジー)」路線を具体的に示す機会となった。アジアの二大国である日中両国がどのような関係を作り上げて行くか、またアジアでどのような責任を果たそうとするのかは、「アジア共同体」構築へと動き出している地域に大きな影響を及ぼすことは間違いない。
しかし、福田首相訪中に関する公式発表を見る限り、「アジア共同体」をめぐって首脳間で具体的に主張をぶつけ合った形跡は見られない。日中両国の外交戦略、思惑の差が大きく、首脳間で取り上げるのをあえて避けたと見るべきか。アジアを舞台に影響力の行使をめぐって日中間のつばぜり合いが現実に続いており、いずれは首脳同士が真っ正面からこの問題に向き合う時が来る。日本側にその用意は出来ているのか。
日本国際フォーラム政策委員会が第28政策提言「変容するアジアの中での対中関係」を発表したのは安倍政権発足直後の2006年10月だった。協力と統合が本格化しているアジアにおいて日本がどのような対中政策を展開すべきかを具体的に提案した。将来の「アジア共同体」構築を目指して、中国は「東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国+3(日中韓)」の枠組みで主導権を取ろうとし、日本は豪州、ニュージーランド、インドを加えた16カ国の「東アジア・サミット(EAS)」で中国の影響力を薄める枠組みで対抗している。「協力と統合」が後戻りできない流れになっている以上、この潮流の定着が「日中両国の『共通の利益』の一つ」というのが、提言の基本認識だ。そのためには経済面の利益の確認だけでなく、政治面でも自由、民主主義、法の支配など基本的価値観の共有を最終的に目指さなければならない。日本はそのような共同体構想を示すべきである、というのが提言の重要なポイントである。
しかし、そのような意味での共同体の実現には大きな障壁が立ちはだかっている。中国が共産党の独裁政権であり続ける限り、日本をはじめ他の民主主義国と基本的価値観を共有できるのか。さらに、台湾を除外したままでは経済の共同体として成立の条件を欠く。このような障壁を乗り越えられるかどうかが「戦略的互恵関係」の行方を占うカギである。日中平和友好条約締結30周年となる今年の春、故主席を日本に迎えて「日中関係の飛躍元年にしたい」という福田首相にとって大きな外交的試練である。
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