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2008-01-11 00:00
「日中関係飛躍の年」への期待
堂之脇光朗
日本紛争予防センター理事長
本年は北京オリンピックの年であるが、日中平和友好条約締結30周年の年でもある。オリンピック開会の8月8日は30年前に福田赳夫内閣の園田直外相が条約交渉のために北京入りされた日であった。末広がりの八の字が重なるのでこの日は縁起がよいと日本側だけでなく中国側の関係者も語っていた。佐藤正二駐中国大使を日本側団長とする事務レベル交渉が大詰めを迎えた段階で大臣が北京入りをされ、交渉は妥結した。これは現地大使館でこの交渉をお手伝いした私にとっても忘れ難い出来事であった。
日中両国は1972年の国交正常化に際しての共同声明で平和友好条約締結の交渉を行うことを約束していた。締結までに6年の年月を要したのは、両国は覇権を求めるべきではなく、またいかなる国または国の集団による覇権を確立しようとする試みにも反対するとの「反覇権条項」(第2条)と、この条約は第三国との関係に関する両国の立場に影響を及ぼすものではないとの「第三国条項」(第4条)の文言についての合意達成に手間取ったからであった。
当時のマスコミなどの関心は反覇権条項がソ連などの特定の第三国に対するものか否かの一点に集中した感があったが、条約締結の真の意義は東西冷戦時代の最中にもかかわらず社会体制を異にする日中両国が平和友好関係を強化、発展させることを誓ったことであり、また、第三国の覇権に反対するというよりも両国の自制的な政策として覇権を求めないことを誓い合ったことである。歴史的、画期的なことであり、これがアジア地域諸国にとり歓迎すべき出来事であったことは言うまでもない。
公開された交渉記録などからも明らかなように、たとえば園田外相は華国鋒主席やとう小平副総理に対してこれまでは隣の国同士は相手が栄え、強くなることを好まない傾向があったが、この条約は隣国同士が相手の繁栄を願い、相手の繁栄の中に自国の繁栄を求めるとの新しい秩序の出発点であると強調された。また、とう小平副総理も反覇権条項はアジアの周辺諸国との関係において中国をも、また日本をも拘束する点に意義があると強調された。もちろん、日本にとっての日米関係の基軸的重要性を前提とした上で両国が表明したそれぞれの公式の立場であった。これが今日では「戦略的互恵関係」と呼ばれる日中関係の出発点、原点であった。日中関係においては健全な競争心や批判精神を捨て去るべきではないが、いたずらに対抗意識や猜疑心を先行させることは慎むべきであろう。
日中平和友好条約を締結した福田赳夫総理の時代から丁度30年を経て福田康夫総理の時代を迎えたが、福田総理は昨年暮れの中国訪問に際し温家宝総理に本年を「末永く銘記される日中関係飛躍の年としたい、北京五輪の成功のために協力したい」と述べ、温総理もこれに賛同された。その意味で本年は日中関係にとり極めて大事な年である。福田総理は訪中を終えて帰国するに先立ち「日本と中国が協力すると両国以上の力を発揮できる。この協力関係がないと地域、世界全体に決していいことはない」と述べたが、全くその通りである。本年は日中両国が東シナ海問題をはじめとする諸懸案を少しでも多く解決して平和友好関係を強固にし、発展させる「飛躍の年」となることを期待したい。
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