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2008-01-23 00:00
自衛隊海外派遣の恒久法制定に向けて、政策協議急げ
鍋嶋敬三
評論家
新テロ対策特別措置法が1月11日、衆院で3分の2以上の賛成多数で再議決され、成立した。次の大きな課題である自衛隊の海外活動を随時可能にする恒久法の成立に向けて、政党間の政策協議を急ぐべきである。インド洋での給油中断で日本は国際的な評価を落とした。新法は1年限りの時限立法である。再び再議決しなければ、またまた中断に追い込まれる。これでは日本は国際社会から相手にされなくなるだろう。新法の審議を巡って参院第1党の民主党の迷走ぶりは目に余るものがあった。福田康夫内閣を解散に追い込むという政局の思惑で走ったからだ。民主党が反対する新法の再議決の際、小沢一郎党首が途中退席して棄権、無責任ぶりには党内からも批判が上がった。これで政権担当能力を国民に訴えることができるだろうか。
福田首相は施政方針演説で「迅速かつ効果的に国際平和協力活動を実施していくため」、恒久法の検討を進める考えを明確にした。自民党はプロジェクト・チームを発足させる。首相は昨年11月の党首会談で小沢代表に恒久法と年金など社会保障制度をテーマに政策協議を提案した。恒久法は小沢氏の持論でもあり、政府・与党との接点はある。しかし、派遣の条件では自民党と民主党は異なる。自民党は国連決議または国際機関その他の要請があれば可能として、米国を中心とする多国籍軍への参加にも道を開く方針だ。一方、民主党は国連決議に基づく活動に限る、と限定している。警護活動や武器使用基準の緩和、集団的自衛権の行使も論議の焦点だ。
与党内では公明党が「憲法9条の枠内」「集団的自衛権の行使は認めない」との方針を固めている。民主党内では、中国やロシアの拒否権で国連安全保障理事会の決議が採択されない事態も予想されるため、国連決議に縛られるべきではないという前原誠司前代表らの異論もあり、それぞれの陣営でねじれを生じている。民主党が2006年11月、国際平和協力活動を自衛隊の本来任務にする自衛隊法改正案に賛成、衆院の9割以上の賛成で成立させたことを考えれば、同党は恒久法制定に前向きに取り組むべきである。
各種世論調査を見ると新テロ特措法、恒久法で国民の考え方は割れているようだ。今、日本の国益に照らして何が必要だろうか。第一に、日米同盟関係を揺るがしてはならない。非核国家である日本は米国の「核の傘」によって守られている、という意識が国民の間で薄らいでいるのではないか。米国との同盟がきしめば、中国、ロシア、北朝鮮に囲まれている日本の安全保障は確保されない。第二に、国際的な平和と安全の維持に役割を果たすのが大国としての日本の責任である。国連安保理常任理事国になろうとするなら、なおさらである。第三に、国民の安保意識の深化が必要である。自衛隊と米軍によって領土、領海の保全、シーレーン防衛がなされ、国民の安全と繁栄が守られていることについて、歴代政府は積極的な説明を怠ってきた。恒久法制定に向けて国民の理解を深める作業が不可欠である。残された時間は既に1年を切っている。
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