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2008-01-28 00:00
アメリカは対北朝鮮政策をゆるめるな
田久保忠衛
杏林大学客員教授
1月25日付け『産経新聞』によると、米国の対北朝鮮政策をめぐって米政府高官が基本方針と異なる発言を相次いで行っているという。北が核計画の「完全申告」をすれば、テロ支援国家指定解除の措置をとるというのが昨年末の米政府の方針だが、北はどういうわけか申告はしていない。だから政府批判が出るのは当然だ。
東京から観測していてはっきりするのは、ライス長官を筆頭とする国務省は北に対して宥和的で、これまで最大のテコになっていたテロ支援国家の指定解除を近々行うのではないかと予想されている。解除が実現すれば、国際金融機関から北に対して大きく融資の道が開ける。日本がこれまでささやかながらとってきた経済制裁措置は事実上無効になり、拉致問題の解決は先に延びるのは必至だ。テロ支援国家指定が解除された場合、拉致被害家族に寄せられてきた国民の同情はそのまま米国批判に変わるだろう。外交を論じる場合には常に大局的、かつ冷静な判断が必要だから、国民大衆に媚びるような言動は常に慎まなければならないが、人道問題に関しては日本国民の判断は正しいと思われる。
ブッシュ政権が解除に踏み切った場合は、違法性が強い。米輸出管理法は、(1)その国がテロを過去六カ月間支援しなかった、(2)将来テロ支援をしないことを保証する――の2点を大統領が認定したうえで、議会に報告することを義務づけているからだ。北朝鮮はいまなお多数の拉致被害者を拘束し続けているが、これはテロ行為の続行を意味しないか。昨年9月6日にイスラエルの戦闘爆撃機がシリアを攻撃した。破壊されたところに存在したのは、北朝鮮の寧辺にある核施設に似ているし、攻撃の3日前に北の船がシリアの港に入り、長時間停泊していた。これについてはイスラエル、シリアの両当事国も米国も攻撃があった事実は認めたものの、その他の詳細はいっさい口をつぐんで公けにしようとしない。現代の民主主義社会にあって情報の不透明が4ヶ月間も続き、それをさらに追求しようとのジャーナリズムもない。異常としか言いようがあるまい。
米下院では共和党のロスレーティネン下院議員が、テロ支援国家解除には被害者の帰国など厳格な条件をつけるよう定めた法案を提出するなどの動きがある。第1期のブッシュ政権では大統領補佐官としてタカ派ぶりを発揮していたライス国務長官は、どうして国務省入りした途端にハト派に転向してしまったのか。まことに奇妙である。日本で親米派と見られている人々の多くが、北朝鮮を一貫して厳しく観察してきた事実を、米国は見落とさないでほしい。
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