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2008-01-28 00:00
地震予知のための研究予算に疑義あり
大藏雄之助
評論家
阪神・淡路大震災のほぼ1年前の1994年1月17日にロサンゼルスのノースリッジで大地震があった。その直後に私はサンフランシスコに近いパロ・アルトのスタンフォード大学を訪問した。このあたりはロスからはかなり離れているのでほとんど影響はなかったのだが、地震研究所だけは被害があって、壁にひびが入っていた。所員の教授は「神様が、余計なことをするな、と怒っているのでしょう」と言って肩をすくめた。
地震予知の研究をしているかどうか尋ねたところ、「どのようにして地震が発生したのか、どんなところが危ないかなどを調べているから、将来予知につながるかもしれないが、予知を目指して研究しているわけではない」という回答だった。つまり、現在の研究水準では地震の予知はできない、ということである。
環太平洋と地中海・中近東は地震地帯であり、大地震の災害対策に腐心しているが、非科学的な予言を除けば、いまだかつて一度も正確に地震が予知されたことはない。事後になって、いろいろと予兆めいたことを発言する人がいるに過ぎない。その中で「地震の予知は可能である」として多額の予算を投じて研究しているのは日本だけだという。外国の地震学者たちは、日本は金持ちだからだとか、政府が藁をもつかむ気持ちでいるのに研究者がうまく便乗しているのだろう、とか冷ややかに見ている。
広い意味での地震予知は可能性があるかもしれない。しかし、何時何分までとは言わないまでも、何月何日と明言できるほどの精度に達するのは難しいだろう。その段階で政府が警報を発令することができるだろうか。万一数日以内に地震が起こらなかったときに、社会的大混乱の責任はもとより、業務を中止したり、遠隔地に避難したりした人々に対する補償はどうなるのだろうか。したがって、地震の予知宣言は政治的に不可能である。だとすると、予知研究のための予算というのは根拠があるのか。
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