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2008-02-06 00:00
福田首相はODA戦略検討に指導力を発揮すべし
鍋嶋敬三
評論家
高村正彦外相の諮問機関「国際協力に関する有識者会議」(渡辺利夫議長)が2008年1月、政府開発援助(ODA)の戦略性の強化やアフリカ支援策などの提言をまとめた中間報告で「ODAは外交力の重要な源泉である」と位置付けた。全くその通りである。しかし、1990年代を通じてODA実績世界一を続けた日本は、財政再建のための予算一律削減という官僚的発想によって2001年には米国に首位を奪われ、2006年には英国に抜かれ、3位に落ちた。一般会計予算で1997年度を100とすると2007年度は防衛費が97で横ばいに対し、ODAは62と38%もの削減になった。外交力の源泉は枯れる寸前である。
援助先進国グループの経済開発協力機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)が2007年暮れに発表した推計によると、日本は2010年にはドイツ、フランス、イタリアにも抜かれ6位に転落する。ODAの対国民総所得(GNI)比は2006年の0.25%(22カ国中18位)からさらに下がって0.21%(21位)と最低レベルに落ちる見通しだ。日本は2008年、アフリカ開発会議(TICADⅣ)、G8北海道洞爺湖サミットを主催する。アフリカ援助と地球温暖化対策が主なテーマであり、ODAが直接かかわる課題にリーダーシップを発揮しなければならない立場にいる。ODAについて日本は2005年、アジア・アフリカ首脳会議で「3年間にアフリカ向けを倍増」、G8グレンイーグルズ・サミットでは「5年間に100億ドル積み増し」の国際公約をした。国際社会注視の中で日本の国家戦略としてのODA政策の行方が問われているのだ。
2007年版のODA白書は「日本が開発途上国の経済社会の向上、地球規模の問題に取り組むことは、日本の評価を高め、外交基盤を強固なものにする」とうたっている。だが、10年間に及ぶODA予算の削減はまさにその逆を行って国際的評価を下げたのだった。ODA予算削減に歯止めをかけなければならない。高村外相や森喜朗元首相がアフリカを回り、TICADへの協力を呼び掛けているが、「なぜアフリカに援助するか」について政府から十分納得のいく説明がされず、国民の理解も進んでいない。援助の国際的潮流について白書は、アフリカ重視とともに援助効果向上への取組みの強化を指摘しているが、日本の援助政策との兼ね合いが難しい課題だ。
複数の援助国・機関が共通の目標や戦略を設定して共同で取り組むという「新しい形態の援助協調」には、日本流の「顔の見える援助」とのジレンマがある(白書)。さらに、開発計画支援のため援助国が被援助国の会計予算に直接拠出する「財政支援」を要請する国が、サハラ以南のアフリカ諸国を中心に増え、国際機関や英国、北欧などが積極的だという。プロジェクト型協力で被援助国の自助努力を支援するという援助の理念を持つ日本は、どう対応するべきか。二つの重要な国際会議の議長を務める福田康夫首相は、ODA戦略の抜本的検討に指導力を発揮すべき時である。
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