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2008-02-07 00:00
大学教育への文科省の介入を排除せよ
鈴木智弘
信州大学経営大学院教授
各種の国際調査で、日本の学生・児童の基礎学力が低下していることが示されている。わが国の産業競争力の観点から、このことが懸念されている。「学力」とは何か。ここでは論じないが、文部科学省が初等中等教育に導入した「ゆとり教育」に、基礎学力低下の責任を問う声が大きい。2年ほど前から、大学にゆとり教育世代が入学してきている。確かに、十年前の学生と比較すると、基礎的な「知識」が欠落している学生が増えている。
ゆとり教育は、「詰め込み教育」への反省を受けて、画一的な人材ではなく、「考える力」「創造力」を高めるために導入されたはずであり、その狙いは、現在でも否定できない。わが国の欠点は、極端に振り子を振ることである。現在の学力低下の一因は、18歳人口が激減している中で、規制緩和として大学数を増やしたため(無責任な株式会社大学もあるようだが)、この10年間で大学進学率が10%以上上昇し、ほぼ50%になり(20年前の大学進学率は25%程度)、入学試験が学力フィルターとならなくなったことにある。そのため、基礎学力が不足していても、大学は定員充足のため入学させざるを得なくなっている。また、全く読書をしない大学生、勉学をしない大学生も激増している。
そこで、文部科学省は、「教育の質の保証」と称して、大学に対して初等中等教育と同じような「指導要領」を実質的に押しつけようとしている。更に定員確保に悩む私立大学(自民党文教族?)に押されてなのか、国立大学の定員管理(入学定員だけでなく、在学者数)を強化しようとしている。この定員管理強化は、留年を制限するものであり、国立大学は、自らの経営基盤を守るためには、義務教育(不登校児でも卒業させている)と同じように、学力不足の学生でも、トコロテン式に卒業させざるを得なくなるだろう。
文部科学省は、初等中等教育を破綻させた責任に頬被りし、大学までも破壊しようとしている。大学は、自分の判断力と責任を持つ「大人」が学ぶ場である。創造力は画一教育からは生まれない。試行錯誤し、自分で悩むことが「大人」になるために必要である。「社畜」育成のための画一化につながる「大学の教育の質の保証」には、大反対である。大学の教育については、IT社会の進展で、多くの内部情報があふれている(無責任な情報も多数あるが)。また、大学の社会への開放も進んでいる。このような情報を自分で判断することも「大人」であり、また、大学間の移動(編入学)も盛んになっている。文部科学省のお節介は不要である。
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