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2008-02-25 00:00
コソヴォの独立を機に全被圧迫民族の自立を願う
大藏雄之助
評論家
コソヴォが独立を宣言した。自治州として支配していたセルビアはもちろん認めず、経済制裁等を実施する。スラヴ民族のよしみでロシアも反対しているが、本音は自国内の少数民族の独立志向への波及効果を恐れているのである。かつてエリツィン大統領はバルト三国がソ連から離脱を声明したときに、「いかなる民族も独立の権利があり、ロシア連邦内の自治共和国が独立を希望すれば当然承認する」と言明したが、チェチェンが独立を表明するとすぐに軍隊を派遣して制圧にかかった。
中国も台湾をはじめ、チベット、ウイグル、新彊などの問題を抱えているからやはり反対だし、EUの中でもバスクを弾圧を続けているスペインやトルコ系の半独立国北キプロスに悩まされているキプロスも賛成しない。要するに各国はそれぞれの利害に応じて行動しているのだ。
そもそもコソヴォを含む旧ユーゴスラヴィアの紛争は、ソ連の崩壊後にスロヴェニアとクロアチアが独立しようとした時に、ドイツが「承認すべきだ」と主張したのに対して、イギリスとフランスが「ヨーロッパ全体が統合の過程にあるのに、ユーゴが分裂するのは好ましくない」と反対し、これにアメリカが同調したのが始まりである。実態は、中欧でのドイツの影響力が強まるのを恐れて、英・仏・米がもっともらしい理屈をこねたのだった。最初からセルビアの軍事介入を阻止していれば、バルカン半島があのようにどろどろになることはなかったはずだ。
元を正せば、第一次世界大戦の末期にアメリカのウィルソン大統領が「民族自決」を唱えたにもかかわらず、その原則は敗戦国ドイツ、オーストリア=ハンガリー、ロシア、トルコのみに適用され、戦勝国の植民地は第二次大戦後までそのまま残ったためだ。いまだに不当な扱いを受けているのは、トルコ、イラン、イラク、シリアにまたがる3千万のクルド民族である。コソヴォの独立を契機として全被圧迫民族が自立へ向かうことを希望する。
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