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2008-03-03 00:00
政府系ファンド(SWF)へ国際連帯税を課せ
角田勝彦
団体役員・元大使
マネーという怪物の野放図な大暴れへの懸念が世界に広がっている。これまでの反グローバリゼーション論者などに加え、浮かれていた先進国などでも悲観論が増えている。金融工学というトリックで増幅されたマネーの力は、サブプライム問題に象徴されるように先進国をも痛めつけた。金融機関の貸し渋りにより実体経済にも影響が及んでいる。途上国はなお危ない。株価暴落などが中国などの一般国民に与える影響も懸念される。
しかし市場経済の建前から、犯罪的部分を除いては、マネーの動きを取り締まるのは困難であろう。たとえば日本では、逆に証券市場などへの規制緩和論者の声が強い。そこで提案したいのは、こうした動きに国際的に課税することにより、透明化を図るとともに、税収を地球環境や中近東アフリカなどでの平和建設の資金に回そうという案である。2005年ダボス会議でシラク氏やブレア氏も支持したトービン税(国際資本移動への課税)という構想があるが、私が提案するのは政府系ファンド(SWF、産油国のほか中国、シンガポール、ノールウエー、ロシアなど)の収益への課税である。
トービン税は技術的にも難しい。2007年4月時点の世界の外為取引は一日3兆ドルに達するが、課税対象をどうするかすら問題になっている。他方、SWF課税は、例えば国連を通じる国際合意さえ出来れば簡単である。税収も大きい。2008年現在のSWF運用資産総額約3兆ドルが11年には約6兆ドル、15年には約12兆ドルへ急増すると見込まれる。運用利回り10%、税率5%と仮定すれば、現在でも年に150億ドルの税収になる。ところでSWFの原資の多くはオイルマネーである。原油価格上昇で2006年までの5年間に湾岸協力会議を構成するサウジアラビア、ア首連、カタール、クウェート、オマーン、バーレーンの6産油国が得た石油輸出収入は、総額で1兆2千億~1兆5千億ドルと推定されている。
税収の使途は、7月北海道洞爺湖サミットの議題案(地球温暖化対策、アフリカ支援、核不拡散、原油高騰など経済課題)などに鑑み、地球温暖化対策と中近東アフリカの平和建設がふさわしい。日本はこのサミットと5月のアフリカ開発会議(TICAD)で、途上国の温暖化対策に5年間で総額100億ドル規模の無償資金協力や円借款などを実施する「資金メカニズム」に加え、米英と協力して地球温暖化対策の国際基金(日本は3年で1000から2000億円拠出)創設を働きかける由である。そろそろSWFを持つほど裕福な途上国(中国を含む)に温暖化対策に参加して貰っても良かろう。
もう一つの使途は、中近東アフリカ、とくに中近東の紛争解決を目的とする支援である。本年1月現地で高村外相はアフリカの平和構築や人道危機対応に300億円規模の支援策を明らかにしたが、中近東はさらに問題である。米軍の駐留や宗派抗争で過激派が集まったイラクからのテロ拡散の脅威に備えるため、サウジ政府は国境沿いに千キロの土塁を築いており、今年前半にもハイテクを駆使したフェンスの建設に着手する由である。かかる経費を不要にする役に立つのなら、産油国も拠出を惜しまないだろう。
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