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2008-03-03 00:00
日本はインドとの原子力平和利用で協力せよ
吉田康彦
大阪経済法科大学客員教授
一時は成否が危ぶまれていた米印原子力協定がブッシュ大統領在任中に発効し、実現する見通しが強まってきた。米印協定が発効するためには、両国議会における(協定の)承認、IAEA(国際原子力機関)との保障措置協定の締結ならびにIAEA理事会の承認、NSG(原子力供給グループ)全加盟国(45カ国)の承認と、次々に越えなければならないハードルが待ち構えているが、大勢は協定承認の方向に動いている。NPT(核不拡散条約)非加盟国であるインドとIAEAの保障措置交渉は、初めてのケースだけに困難をきわめたが、2月末ウィーンで実質的に妥結し、これをインド議会が承認すれば締結に向けて大きく前進する情勢となった。ただし、インドに対して核燃料の供給をいかに保証するか、という点はいぜんとして未解決のようだ。
インドは米印協定の下では、軍事目的の核施設(8ヵ所)を平和利用施設から切り離し、その間で燃料を自由に補給、移動できなくなるため、米国ないし第三国による燃料供給保証が不可欠となる。米国はインドが核実験を再開したら供給を停止するとしているが、共産党を含むインドの連立左派は、安全保障上の権利としてこれに反発しており、今後NSGの審議に持ち越されることになろう。
インド国内の論議が難航し、今年後半になると米大統領選が本格化するため、ブッシュ政権在任中の米印協定発効は見込み薄となるが、すでにフランス、ロシア、さらに中国までもが、インドとの原子力協力に乗り出しており、NSGは有名無実化する趨勢にある。こうした中で、原子力先進国では日本だけがNPT至上主義に固執し、NPT非加盟国であるインドとの原子力平和利用協力をめぐって逡巡しているのは、主体性がなさすぎる。あまりにも教条主義的である。
温暖化対策としての原子力の見直しは時代の流れであり、インドの潜在的エネルギー需要急増を考慮すれば、日印協力が不可欠だ。NPTを支える3本柱は「核不拡散」「核軍縮」「原子力平和利用推進」であり、インドはこのいずれにも合致している。インドが核保有するに至った理由は、NPTが5大国の核保有を容認している「差別性」にある。この点をきちんと見極めて大所高所から判断する必要がある。
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