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2008-03-28 00:00
(連載)「円安バブル」の中期的崩壊過程が始まった(2)
鈴木淑夫
元衆議院議員・鈴木政経フォーラム代表
現在の円相場は昨年の7月に比べて、実質実効ベースで1割ほどの円高となっているが、この6年半に36%も円安になったことを考えると、これで「円安バブル」の崩壊が終わったとは思えない。一高一低を繰り返しながら、今後も中期的に「円安バブル」は崩壊の過程を辿るであろう。その過程で急激な円高が起きることは、国際取引の採算が攪乱されるので好ましくない。
しかし、中期的な円高傾向は日本経済にとって決して悪いことではない。円高は日本の輸出に不利であるが、日本のGDPに占める製造業の比率は2割に過ぎず、仮にその半分が輸出企業であるとして、1割である。残りの9割は、家計部門、公共部門、内需向け製造業やサービス部門である。これ等は円高によって輸入品が値下がりし、実質購買力が増えるので有利である。
また輸出企業も、他国企業に真似の出来ない機器類などを輸出している場合が少なくないので、世界需要の価格弾力性は低く、円高に見合った値上げが通るケースが少なくない。東芝など電気・電子機器メーカーでは、原材料や部品の輸入と製品の輸出をバランスさせ、為替差損が発生しないようにしているケースも少なくない。トヨタを始めとする自動車メーカーなどは、工場をグローバルに展開しているので、国内生産と海外生産の比重を変えて為替相場変動に対応することも出来る。
更に、日本経済全体の視点に立つと、実質レートの円高は日本製品を高く売り、海外製品を安く買うことを意味する。これは、少ない輸出で高い成長が可能になる交易条件の好転にほかならない。日本の潜在成長率を高める上でも、有利な条件である。日本は、ニクソン・ショック(1971年)やプラザ合意(1985年)で大幅な円高に直面しながら、産業構造の柔軟な変化などによって対応し、経済発展を維持してきた。
今回の円高は、行き過ぎた「円安バブル」の巻き戻しであり、1971年や85年のケースよりは、はるかに対処が容易である。むしろ、これを契機に、極端に輸出に偏った成長から、内需と輸出のバランスがとれた成長に転換し、企業と家計の格差を縮小する絶好の機会である(詳しくは、私の新著『円と日本経済の実力』(岩波ブックレット、今月発行)を参照されたい)。(おわり)
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