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2008-03-28 00:00
対「北」経済制裁延長は間違い
吉田康彦
大阪経済法科大学客員教授
2年前の2006年10月、(拉致ではなく)核実験に対する抗議の意思表示として発動してきた対「北朝鮮」経済制裁を、福田内閣はさらに延長する方針を固め、4月8日に閣議決定する予定という。日本政府は、昨年10月、拉致問題をめぐる“進展”がないことを理由に、貿易・送金全面禁止、公務員の渡航禁止、船舶の寄港禁止などを含む制裁を、向こう6ヵ月間の期限付きで延長した。来たる4月13日の期限切れを前に、福田首相がいかなる決定を下すかが注目されてきたが、核計画の「申告」をめぐる米朝の対立が解消せず、当面合意に至らないと判断して、延長のハラを固めたようだ。この判断は早計であり、愚策だ。
今月13日、ジュネーブで開催された米朝協議は、たしかに双方の主張が平行線のまま物別れに終わったが、決裂したわけではない。ヒル、金桂冠両代表とも進展を裏づける発言を繰り返しており、「ニューヨーク・チャネル」などを通して水面下の接触が続いている。プルトニウム備蓄については(6者協議の議長国)中国に、ウラン濃縮とシリアへの核技術輸出疑惑については米国に、それぞれ申告するという妥協案を中心に、米朝の溝を埋める努力が続いているとも伝えられる。いずれにせよブッシュ政権は在任中に朝鮮半島非核d化を実現する方針に変わりなく、日本政府の制裁延長はこの努力に水を差すものだ。
米朝対立が続いたとしても、これに便乗して経済制裁を続けることは、日朝国交正常化を拒否するとともに、拉致問題の解決をますます遠ざけることを意味する。日本政府としては拉致被害者家族の圧力で経済制裁に踏み切ったのだが、全く逆効果になっていることを知るべきだ。経済制裁は相手の政策転換を促し、譲歩を導き出せなければ無意味だ。制裁が発動されてから1年半、拉致問題でいかなる進展があったというのか。
北朝鮮当局は制裁下における対話をいっさい拒否し、制裁解除と朝鮮総連に対する弾圧の中止を対話再開の前提条件として要求している。対話なくして拉致問題の解決はあり得ないのだ。経済制裁の実効性はまったくない。私は毎年訪朝しているが、平壌には安価な中国製品にまじって日本商品が溢れている。すべて中国経由で入荷し、少しも困っていない、と関係者はいう。対話不在のまま日本政府が経済制裁をいくら続けても、拉致問題解決につながらないことだけは断言できる。
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