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2008-04-08 00:00
大学もUSA基準からの脱却を
鈴木智弘
信州大学経営大学院教授
サブプライムローン問題を切っ掛けに、急速な円高ドル安が進行し、輸出中心の景気拡大を続けてきたわが国の経済の先行きに懸念が生じている。筆者は80年代後半、国際金融の現場を経験したが、昨夏から、その経験を踏まえて、次のように様々な場で発言してきた。サブプライム問題は深刻な「ドル離れ」に繋がり、冷戦崩壊後唯一の大国となったUSAの覇権が揺らぐことになる、などである。21世紀になって、わが国を席巻したグローバル化とは、USA基準がデファクト・スタンダードとなったことであった。このことは、教育・研究の世界でも同様であった。
研究は、自然科学だけでなく、社会科学においても、英文の査読誌に業績を発表することが基本になってきた。わが国でも英文査読誌でなければ、業績にあらずという風潮が強まってきた。教育においては、大学設置の規制緩和で、多くの新設大学が開校すると共に、ゆとり教育への反省と相まって、大学教育の質が厳しく問われるようになった。そのため、大学の教育内容や施設、財務などを評価し、改善に結びつけることを目的に「認証評価制度」が導入され、各大学は7年に1度は必ず、文科省が認定した認証評価機関(第三者機関)の評価を受けなければならなくなった。教育という商品の特質は、売り手と買い手に情報の非対称性があるということ、そして買い手である学生にとって、取り返しの付かない貴重な時間が大学進学で必要とされるということである。このような第三者評価は、医療や福祉の現場にも多く広がっている。
公正な市場が成立しない財の取引には、的確な審判(評価)能力を持つ第三者が介在することは不当ではない。しかし、第三者評価では、評価者の評価能力の有無、あるいは的確な評価基準の確立如何が、常に問われる。教育、特に筆者が属するビジネス・スクールにおいては、USAが常に手本とされ、評価者もUSA留学者であることが多い。USA経営学(特にビジネス・スクールで教えられるもの)には、株主利益を極端に重視する、財務至上主義など、わが国の社会・企業風土に必ずしも適さず、しかも、USA企業の現状をみれば、首を傾げざるを得ない内容も少なくない。以前、何でも「外国では」と、論理をすり替える者のことを「出羽(では)の守」と揶揄したが、現在、国立大学を中心に、周回遅れのUSA基準の風が吹いているように思える。
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