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2008-04-17 00:00
現実主義者としての「核廃絶論」
坂本正弘
日本戦略研究フォーラム副理事長
2008年のISA(米国国際関係学会)の年次総会はサンフランシスコで3月26~28日開催され、7,000人を超える国際政治、国際関係論学者が集まった。故佐藤英夫教授に誘われて、パネリストとして参加して以来、15年となるが、この10年は“Pax Americana, Rise of Asia, Japan’s Strategic Choices”というパネルを自ら組織し、本年も米、台、日の専門家と共に討論を行ってきた。3月29日の核拡散問題のパネルでは、いきなり「日本は核装備をするか」という議論になり、小生も「日本の核武装は政治的、経済的にコストが高すぎる」と述べたが、同時に「NPT体制下で、日本は監視され続けなのに、P5はやりたい放題で、その義務を守ってもらう必要がある」と指摘した。
この2月、ハワイのマウイ島で日米戦略会議があり、Dr. Brads Roberts は「米国の安全保障戦略」の文脈の中で、「核の比重は冷戦後一貫して減少している。新しい Triad では、核以外の精密兵器が比重を増している。2009年に出る核戦略(NPR)でも、核の比重の低下は続こうが、一つの理由は、高額の維持コストである」旨、述べた。更に、Schultz、Perry、Kissinger などが、2007年1月に Wall Street Journal で核廃絶の提案をし、2008年1月にもそのフォローアップをしているが、その中心的な問題意識は核拡散をどう防止するかであり、NPT体制での米国の指導性を勧告している。
Dr. Roberts の指摘を聞いて、3つの感想をもった。第一は「核兵器が廃絶されたら、誰が一番儲かり、誰が損をするかと考えると、米国の軍事優位はむしろ高まり、日本やドイツが儲かり、ロシアと中国が損をする」だ。長島議員に話したところ、「検討に値する」との評価を戴いた。第二は「アメリカは核拡散が第2の9.11事件を引き起こすと恐れているが、それは、P5が特権におぼれ、NPTで規定した核軍縮に取り組んでいないためである。日本の核武装論も、NPT体制の不平等性ゆえである。日本はがんじがらめだが、中国は何をしてもかまわないのは、不平等すぎる」だ。第三は「核の維持コストの増大やMDの進展などから、アメリカにおいても新政権の誕生後、核戦略を巡って新しい提案がありうる」だ。
日本は平和主義の立場から核廃絶を国連に提案してきたが、以上の状況を踏まえ、核廃絶の主張を現実主義者の視点から提案できないかと考え、ワシントンで、Dr. Robertsを含め、関係者と議論してみた。今のところ「ロシアと中国が反対する。核兵器のほうが廉価である。アメリカの Old Triad の老朽化は著しいが、中国は新しい。米国の伝統兵器での優位も、将来挑戦を受ける」など、当然の反論がある。しかし、上記 Schultz 提案では核の warning time の延長、短距離核の廃止などの提案がなされている。中国は核の先制不使用を唱えているが、核使用の対象は核所有国に限るべしとの国際常識を固めるべしなどの提案がある。いずれにしても日本は、米国と密接に連携し、本件につき、相互の分業体制を協議して進めるべきと考える。本件についての、批判、意見、提案を歓迎します。
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