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2008-04-21 00:00
外資電源開発株買増しへの政府中止勧告を支持する
角田勝彦
団体役員・元大使
政府は、4月16日、英投資ファンド(TCI)に対し、国内電力卸・電源開発(Jパワー)株の買い増し計画を中止するよう勧告した。TCIはJパワー株を9.9%保有し、今年1月に20%まで追加取得する計画を提出していたのである。TCI側は「海外からの株式投資を拒否することで、日本の金融資産は過小評価される」「中止勧告は日本経済、電力業界、国民に大きな悪影響を及ぼす」と批判した。一部には、日本は金融立国を目指し市場を開くと言いつつ、正反対のことをしているとの批判がある。
しかし、日本の外為法は、「国の安全」「公の秩序」「公衆の安全」の3つの観点から、一定の場合外資に申請を義務づけている。今回の例は、TCIが「Jパワーの経営方針で原発の建設・運営への悪影響や送電設備の修繕などに関し、具体策を示さなかった」ため、TCIの短期的な収益にこだわった経営参画では、将来電力の安定供給に支障を来すとともに、国の原子力政策に影響を与える恐れがあると認定されたもので、妥当な判断と目される。なお、政府は、この中止勧告を、外為法の下であった過去3年間で約760件の事前届け出のなかで、ただ1件の例外であり、外国の対日投資を促す姿勢に変わりはないと強調している。
一事が万事である。企業の短期的利益が全てではない。自由化による国の利益は、各企業や業界、さらには財界の(経済中心の)観点からのみ判断されてはならない。私は、いわゆる、ぬるま湯鎖国論や攘夷論を奉じるものではないし、グローバリゼーション(世界一体化)の価値を認めている。例えば世界GDPは1995年の28兆3379億ドル(同年の世界人口は57億1600万人)から2007年は53兆3524億ドル(同66億1590万人)にほぼ倍増した。ひとり当たりGDPは4958ドルから8064ドルに増えた。世界人口のうち1日1ドル未満の収入で暮らす人の比率は1990年の32%から2004年に19%(実数では9億8000万人)に減少した。人類は豊かになった(ただし格差は増大した)。
また、私は第3次産業の重要性を充分認識している。英国が国を開き世界のマネーを集める金融立国で経済再生を実現したのは、周知の事実である。しかしまた、日本には「三方良し(つまり売り手に良し、買い手に良し、世間に良し)の商売」という考え方もある。株が高くなりさえすれば良い、企業業績が上がりさえすれば良いとの考えは、企業の社会的責任に背く。それに企業エゴは、当座は見えない社会的コストを他者、具体的には国に負担させることを意味する。つまり国民の経済的負担を増やすことになる。さらに私は経済成長一辺倒では国の進路を誤ると考える。たとえば安易に単純労働者の導入に踏み切れば、必然的に2級市民を発生させ、膨大な治安、医療、教育などの支出を必要とさせるほか、社会的軋轢を生むことになろう。どう判断するかは政治の責任に委ねられている。
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