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2008-04-30 00:00
坂本正弘氏の「現実主義者としての核廃絶論」にコメントする
角田勝彦
団体役員・元大使
坂本正弘氏の4月17日付投稿「現実主義者としての『核廃絶論』」を関心を持って読ませて頂いた。「批判、意見、提案を歓迎」とのご慫慂もあり、卑見を申し述べたい。
ちょうど4月28日から5月9日までの予定で、NPT再検討会議第2回準備委が開催されている。これは、周知の通り、2005年に開催された前回のNPT再検討会議で実質的な合意文書の採択に失敗した経緯に鑑み、2010年の再検討会議で、核軍縮、核不拡散、原子力の平和利用という条約の3本柱について、何らかの進展(できれば勧告案の採択)を行うための下準備を目的としている。2007年の第1回準備委で「NPTの順守を再確認する」という議題を採択したことから、今回はこの議題を出発点として、妥協点を探ることになろう。2010年の再検討会議へ提出する勧告案の採択そのものは、可能であるにしても、2009年の第3回準備委での採択がせいぜいであろう。
さて坂本正弘氏の投稿への卑見は、具体的には次の通りである。
(1)核保有そのものを絶対悪としない現実主義者の論点からしても、核戦争は絶対悪である(例えば、モーゲンソーは「国民がいなくなっては、国益もない」と喝破した)。遠い戦争でも、人類はもちろん地球への悪影響は恐るべきものがあろう。
(2)現実主義者の論点からは、NPT体制の不平等性を論じても、あまり益はない。それは、むしろインド・パキスタンなどへの核拡散の口実になった。
(3)イラクの核保有の可能性が抹消された現在、現実主義者の論点から、当面の脅威はイラン、北朝鮮の核開発である。さまざまな具体的理由から、とくにイランが脅威である(TVで見たのだが、ヒラリー米大統領候補は、イランへの軍事攻撃の可能性も有り得ると述べていた)。よって、NPTなども、まずこれに力を注ぐべきである。
(4)核軍縮は、あるていど進展している。日本政府は、核軍縮の過程の透明性を確保するため、今回の第2回準備委に、核兵器保有国に対して、削減、解体などの段階ごとに、対象となった核弾頭数や運搬手段数を具体的に公表するよう、訴える文書を提出した由である。日本が核軍縮の分野で具体的提案をするのは初めてとされるが、歓迎すべき動きである。もちろん核保有の透明性を確保する努力は、いっそう重要である。もし権威ある国際的機関により、各国の保有状況の推定が明らかにされれば、たとえば年率2桁の軍拡を続ける中国への抑制にもなろう。
(5)「核使用の対象は核所有国に限るべしとの国際常識を固めるべし、などの提案がある」との記載に関しては、「核などの搭載を疑われるミサイルの、未発表の発射準備への先制攻撃は、自衛とみなす」との常識を固めるほうが有益と思われる。
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