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2008-05-14 00:00
(連載)胡主席の訪日を評価する(2)
角田勝彦
団体役員・元大使
国内事情もあり今回妥協には至らなかった個々の問題の解決が重要である。1972年の国交正常化以来、「第4の共同政治文書」となる5月7日付共同声明、及び計70項目もが盛り込まれた8日付「日中両政府の交流と協力の強化に関する共同プレス発表」(両国実務担当者は「ファクトシート」と呼んだ)は、ひとつの成果であるが、日中両首脳が諸懸案の解決に邁進しなければ、すべては絵に描いた餅となろう。
この関連で、テレビ報道で印象が深かったのは、福田首相が胡主席のピンポンを見た後のコメントで、「戦略的な卓球で、なかなか油断してはならないと思った」と釘を刺したことである。しぶとさにはしぶとさで対応すればよい。とくに「解決のメドが立った」と発表された東シナ海ガス田開発問題で、北海道洞爺湖サミット前の決着が行われるかどうかが試金石になろう。福田首相の五輪開会式出席は、その結果を見て決めたらよい。
マルチの面では、人権(普遍的価値、チベット関連)、環境(気候変動に関する日中共同声明)、軍拡、国連安保理改革などで、それなりの進展があった。第4の政治文書とされる今回の日中共同声明での、日中双方が「国際社会が共に認める基本的かつ普遍的価値の一層の理解と追求のために緊密に協力する」、「共に努力して、東シナ海を平和・協力・友好の海とする」、「互いに協力のパートナーであり、互いに脅威とならないことを確認した」、「(中国が)日本の国連における地位と役割を重視」するとの表現は、これまでの政治文書にはなかったものである。
福田首相は、共同記者会見で「大局とは、国際社会で大きな存在となった日中両国が、アジア及び世界の安定と発展に貢献する責任をしっかり認識し、絶えず相互理解を深めて、相互信頼を築き、互恵協力を拡大しつつ、アジア太平洋及び世界の良き未来を、ともに作り上げていくことだ」と述べ、胡主席も賛同したが、このような日中協調は、アジア及び世界各国が歓迎するものであろう。訪日中のネグロポンテ米国務副長官も「日中関係の進展を米国としても歓迎している」と述べたのである。(おわり)
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