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2008-05-15 00:00
噴飯ものの一院制議連発足
杉浦正章
政治評論家
自民党が政権を失いかねない政治状況だというのに、またまた悠長でピントの外れた議員連盟の発足である。元防衛庁長官・衛藤征士郎らが提唱して「衆参両院を統合し、一院制の新国民議会を創設する議員連盟」が16日発足する。予見しうる将来において100%実現しないテーマに、首相経験者らが顧問として顔を連ね、気勢を上げるという。ねじれ国会で民主党に追い詰められて、いよいよ自民党も末期的症状か。議連の設立趣意書案は「衆参両院の審議は反復に終始している。一刻を争うはずの国政上の課題が遅滞し、国民の背負うコストは膨大だ」と指摘し、一院制議会の設置を提唱している。たしかに、今の自民党にしてみれば、野党に過半数を制せられた参院の存在は、「無用の長物」かもしれない。とりわけ民主党が国会審議で参院を“占拠”したような戦術を取り、重要法案を3回にわたって衆院の3分の2の多数で再可決しなければならない状況は、政権政党としても我慢がならないものだろう。
しかし、衆参ねじれ状況が結果的にもたらしたチェック・アンド・バランスの効果が、最近出てきているのは確かだ。年金問題での追及に迫力が生じたのも、“ねじれ効果”だし、政局の最大の焦点になろうとしている後期高齢者医療制度問題も、ねじれていなければ、政府・与党に押し切られるだけだろう。野党が、参院に後期高齢者医療制度廃止法案を提出して、総選挙を経て撤廃に追い込もうという戦術がとれるのも、両院制度の結果である。そもそも一院制を採用している国は、中国などの旧共産主義国か、人口の少ない小国が多い。中国の場合、共産党一党による政治体制が構成されており、一院制は不可欠の政治形態だろう。しかし、一党独裁のもろさは、歴史が証明しており、参考にはならない。
二院制の欧米諸国がおおむね円滑な政治形態を取っているのは、二院制による民主主義を定着させる“政治能力”があるからにほかならない。米議会も、過去26年のうち18年はねじれ議会、つまり分立政府だ。なぜ分立政府で政治が可能かだが、それは米国の民主政治が大人の対応を可能にしているからだ。ねじれに対応する努力もしないまま、制度を変えるという発想は、苦し紛れの“泥縄政治”そのものだ。自民党は自らの政治能力をのなさを認めるのと同じだ。日本で一院制を導入した場合、両院相互の均衡と抑制が働かない結果、議会が暴走する可能性がある。単眼的審議で法律が成立してしまう恐れもあり、その時の雰囲気に流されて立法がなされる可能性も否定できない。要するに、和製ヒトラーが出てきやすい制度となる可能性が強い。民主主義とは忍耐である。制度を変えようなどという発想は、その忍耐放棄につながる。第一、二院制度は日本国憲法第42条で定められている憲政の柱だ。予見しうる将来憲法が改正される政治状況はない。
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