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2008-05-22 00:00
四川大地震に関する私の所感
伊東道夫
会社員・経済学博士
5月12日、四川省に大規模な地震が発生した。18日現時点で死者は約3万2千人、負傷者は約22万人に達したと報道されている。今後も被災者は増えていくと思われるが、そもそもここまで被害が拡大したのはなぜなのだろうか。私見ではあるが、建築物の品質に問題があったように思える。連日、テレビで報道されている被災地の状況を見ると、倒壊した建物が跡形もなく崩れていた。日本の場合、地震で建物が崩れると、むき出しになった鉄筋がいたるところで見られる。しかし、今回の震災地では鉄筋がほとんど見当たらなかった。特に、多くの犠牲者を出した小学校の校舎が、倒壊後瓦礫の山と化した様を見ていると、耐震建築の配慮を欠いた人災であったと言わざるを得ない。
中国政府としてこれからが正念場である。8月にはオリンピックが開催されるが、これを絶対成功させるべく、今まで最高の努力とパフォーマンスを行ってきた。海外に対しても、改革の中国をアピールしつつ、外交に力を入れてきた。これで、オリンピックまでがんばれば、軟着陸によって更なる経済発展に弾みをつけ、明るい将来図が描けていたはずである。しかし、3月14日にチベットのラサでチベット仏教僧らが起した暴動を、中国政府が武力によって鎮圧したことが、世界的な抗議活動を活発化させる結果となってしまい、オリンピックにも影響が出ることとなった。
その後、世界各地で始まった聖火リレーにも妨害が出たが、中国政府は何とかこの危機を乗り越えてきた。そしてチベット問題がやや沈静化してきた5月に、中国政府の最高指導者、胡錦濤氏が日本を訪問した。しかし、情勢改善の兆しが見え始めたこの時に、大地震が起こった。中国政府にとっては、踏んだり蹴ったりの情況だが、その中で、地震発生後の対応をめぐり、中国政府に対し非難の声が出始めている。経済発展の負の影響によって地方政府が先走りしすぎた結果、国民の利益をないがしろにする手抜き工事が行われ、今回の悲劇が起こったという非難である。
地震発生後、中国政府は異例の速さで温家宝首相を現地に派遣した。軍隊や武装警察の特殊部隊も迅速に派遣し、救助活動を実施した。それは大いに評価したい。チベット問題で揺らいでいた政府への信頼感も、少し和らいだ気がする。しかし、中国政府がここで一番気をつけなければならないのは、復興の過程において発生する政府幹部の汚職、公費・義援金の横領などである。過去そうであったように、必ず起こるであろうこの問題に、注意を喚起したい。中国が諸困難を克服し、オリンピックを成功させることを希望し、大地震でお亡くなりになった多くの方々のご冥福をお祈りする。
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