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2008-06-04 00:00
アフリカ支援、目標達成の検証が大事だ
鍋嶋敬三
評論家
「アフリカ問題の解決なしに21世紀の安定と繁栄はない」を合言葉に、横浜市で開かれた第4回アフリカ開発会議(TICADⅣ)が5月30日閉幕した。15年間にわたって会議を主導してきた日本にとって、国連加盟国の4分の1を占めるアフリカ諸国との協力強化で外交的成果を収めたと言える。会議の成果を7月の北海道洞爺湖サミットに反映させることへアフリカ諸国から強い期待が表明され、議長の福田康夫首相は「期待に応えるため全力を尽くす」と決意を述べた。会議では、成長の加速、人間の安全保障の確立、サミットの主テーマでもある環境・気候変動問題への対処の3つを優先事項とする共通の認識とパートナーシップを確認し、「横浜宣言」として発表した。今後5年間のロードマップとして行動計画も策定した。しかし、これだけでは直ちにTICADⅣが成功したとは言えない。行動計画が実際に目標を達成できたかどうか、検証の結果にかかっているからである。
アフリカ諸国の要望は、インフラ開発と貿易・投資の推進に集中した。福田首相が示した約束は、山のようにある。世界を直撃している食料価格の高騰対策として1億ドル緊急食料援助を実施、相当部分をアフリカに向ける。インフラ、農業分野に40億ドル(4200億円)の円借款を供与する。今後5年間で政府開発援助(ODA)を倍増、無償資金、技術協力も民間投資も倍増する。10年間でアフリカのコメの生産量を倍にする。このため外務省と国際協力機構(JICA)は農業分野で260億円の無償・技術協力を実施する。行動計画には小中学校1000校の建設、理数科教員10万人を対象にした訓練計画もある。
TICADは「アジアの開発経験をアフリカと共有できるフォーラムとしての役割を果たしてきた」(横浜宣言)。日本の経済協力によって発展を遂げたアジア諸国の経験をアフリカで活かす「南南協力」がプロセスの大きな特長である。行動計画でも、タイから農産物の収穫や魚の養殖技術の指導者が、ベトナムからも農業技術者が、アフリカ諸国に派遣される。このような「アジア・アフリカ協力」は、既にコメの生産性向上のためインドネシアの農業専門家がマダガスカルへ、投資環境整備のためマレーシアの開発専門家がザンビアへ、それぞれ派遣されて、実を挙げている。
TICADⅣで、初めて計画の実施状況を検討、評価する「フォローアップ・メカニズム」の設立が決まった。事務局を日本外務省に置き、テーマ別閣僚級会合を活用して検証する。原則、年1回フォローアップ会合を開催する。アフリカ連合(AU)議長のキクウェテ・タンザニア大統領は「今後の課題はいかに実施に移していくかであり、フォローアップ・メカニズムは実に心強い」と期待を示した。詳細な計画も確実に実施されなければ、絵に描いた餅(もち)だ。5年に一度のTICADを一過性のお祭り騒ぎに終わらせないためにも、検証の結果をしっかり分析し、説明責任を果たすのが、政府の責務である。
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