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2008-06-09 00:00
自民党の選択:「政権」か「後期高齢者医療制度」か
杉浦正章
政治評論家
各党挙げての総力戦であっただけに、沖縄県議選の与野党逆転は後期高齢者医療制度への不満が4月の山口衆院補選に続いて与党を直撃した形となった。もはや政府・与党は同制度凍結か、廃止なくして、選挙を戦えないことがはっきりした。まさに、自民党は、政権を取るか後期高齢者医療制度を取るか、の判断を迫られていると言っても過言ではない。沖縄県議選は、与野党とも幹部を派遣し、後期高齢者医療制度の是非を争点に戦いが繰り広げられた。自民党は高齢者問題で、政党としての知性を疑うタレント政治家のテレビCMまで流したが、逆効果だった。与党が22人にとどまったのに対し、野党側は26人が当選し、選挙前は1議席だった民主党は、公認候補4人全員が当選した。
これが物語るものは何か。自民党が選挙に間に合わせようと懸命にまとめた高齢者制度見直し案が全く効き目がなく、野党の後期高齢者医療制度廃止法案の効果が絶大であったことを意味する。固い支持層であった高齢者が、この制度発足以来自民党離れを起こし、総選挙をすれば地滑り的敗北が必至、とささやかれる構図が証明される結果になった。とりわけ沖縄県民は家族の絆が強いとされており、その家族にくさびを打ち込むような制度が受け入れられることは難しかった。加えて厚労省の主張とは逆に、高所得者層よりも低所得者層の方が負担増になっていた、という調査結果が判明し、選挙は制度設計上の欠陥を直撃したとも言える。
要するに、手直しでは“効き目”がないのである。しかし政権与党があまりに長く続き過ぎた結果か、自民党は柔軟対応ができない政党になってしまったようだ。政府・与党内にも選挙対策委員長・古賀誠が凍結論に傾いているし、閣僚の中にも「凍結しかない」と漏らす向きもいるが、大勢となっていない。このままでは、制度が残って、政権が失われる構図だ。それほどの価値がある問題だろうか。いったん制度を凍結するか、廃止して、国民が納得できる新制度に作り直せばよいではないか。
いずれにしても、今後、首相・福田康夫の支持率が劇的に回復することは予想できず、福田の手による解散・総選挙だけは避けようとする空気が一段と強まるだろう。また自民党内のポスト福田を意識した動きは加速されるだろう。一方、民主党など野党は、首相問責決議案提出への追い風と判断し、一段と攻勢を強めるだろう。政府・与党は通常国会閉幕に逃げ込みたいところのようだが、閉幕後も選挙区レベルでは事実上の選挙戦が展開され、高齢者医療制度をめぐる論議が収まることはあるまい。
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