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2008-06-24 00:00
(連載)佐藤優氏の正体見たり(2)
西村 洋治
団体職員
捕虜虐待は国際法違反であるが、佐藤氏は「チェチェン問題は国内問題だ」というかもしれない。だったら、裁判による法の手続きをへてから処刑すべきである。チベットにおける中国はもちろん、イラクにおけるアメリカだって捕虜虐待はしているかもしれないが、ロシアがチェチェンでやっていることは、それらとは比較にならない。やっていることの非道さがけた外れである。人口100万の小国に押しかけていってやっていることの規模もけた外れである。民族皆殺しに近い。非道さや規模でロシアのチェチェン抑圧に匹敵するのは、おそらくナチス・ドイツのホロコーストだけであろう。文明国を名乗る以上は、これを不問に付したり、まして理解、擁護する余地などはない。
しかし、佐藤氏は、チェチェン人に個人的には同情しても、日本国家の外交戦略としては、ロシアの立場を「全面的に支持する」のが正しいのだという。日本とロシアの間には未解決の北方領土問題があるので、日本はここでロシアを怒らせるべきではなく、むしろ逆に恩を売って、一日も早く北方領土を返してもらうようにするのが正しいというのだ。この論理だと、係争案件のある国に対しては、その問題が解決するまでは日本は何もいえないし、できないことになってしまう。拉致問題をかかえた北朝鮮などに対しては、さしずめ経済制裁などはとんでもない話で、むしろ金正日のご機嫌をうかがうために米国の「テロ支援国家指定」解除を率先して支持すべきだということになってしまう。
これほどまでに佐藤氏が、ロシアのやることなすことすべてを理解し、支持し、擁護しようとする本当の理由はなになのだろうか。2001年の森・プーチン首脳会談の結果であるイルクーツク声明以来、日露間の領土問題交渉はすっかり冷え切っている。ロシア側が高圧的に出て、「領土問題は、解決済み」とか「二島返還で打ち切り」とかの態度を打ち出してきたからだ。しかし、このようなロシア側の態度硬化を引き出したきっかけは、日本側の外交的大失策にある。それまで日本側は、1993年東京宣言を足がかりに着実に四島返還路線を押し進め、ロシア側を追い詰めていたはずなのに(そのクライマックスは1997年のクラスノヤルスク会談であった)、このイルクーツク会談で日本側は、突然自ら1956年共同宣言を持ち出すことによって、ロシア側に「日本はあせっている。二島返還で手を打とうとしている」との誤解をあたえてしまったからだ。
そのことについて佐藤氏は、イルクーツク会談を正当化するだけでなく、そこで自分の果たした役割を自慢さえしている。いうべきときに、いうべきことをいえない対露外交は、けっきょくロシアの意を忖度して、ロシアに迎合する売国外交にならざるを得ない。ロシア・ペースの交渉に、身を託し、にじりよって、それが外交になるのか。ロシアの対チェチェン抑圧政策は、スターリン主義の残滓の一つでもある。それを支持して、同じくスターリン主義の残滓である北方領土問題を解決できるはずがないことを、佐藤氏は知るべきである。(おわり)
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