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2008-06-25 00:00
米国はなぜ世界の評価を下げたか
鍋嶋敬三
評論家
ブッシュ米政権の任期もあと6ヶ月。2001年9月11日の同時多発テロ以降、外交のエネルギーを主に対テロ戦争に注ぎ込んできた。大統領の支持率低下とともに、世界における米国の評価も大きく損なわれている。反省期に入った米外交は、来年1月の新政権発足で評価を回復することが可能だろうか。下院外交委員会の小委員会が6月、「米国の評価の下落:なぜか?」と題する報告をまとめた。10回に及ぶ公聴会で世論調査や地域の専門家から証言を得た結果である。冷戦最中の1950年代から2000年まで続いた米国とその外交政策に対する好意的な評価は2001年を境に逆転、2002年以降、否定的な評価に取って代わられ、専門家からは「歴史上最低」の烙印を押された。
イスラム世界での評価が低いのは、イラク侵攻のため当然とも言える。しかし、第2次世界大戦後、好意的評価が50%以下になったことがない欧州でも大きく下がった。欧州連合(EU)では53%が「米国は世界平和への脅威」と答えた。これはイランや北朝鮮に対する評価と同レベルという。専門家は「全く新しい現象で2005年までに否定的な見方が定着した」と証言した。その背景として二つの流れが指摘される。第一は、西洋対非西洋の「文明の衝突」説で、民主主義や人権などの価値観の違いに根差すというもの。もう一つは、米国の政策に起因するという見方だ。
第一の米国の価値観や文化への拒絶に基づく否定的評価は、反米主義につながる。第二の見解では、イラク侵攻、独裁者への支援、イスラエルへの肩入れ、国際法違反の捕虜虐待などの政策への反対が、主な理由と位置付けている。米国が単独行動主義によって国際法に束縛されずに政策を決めたり、民主主義や人権についてのブッシュ政権首脳の発言が偽善的だと受け取られ、米国への反感が増幅されたという。「悪の枢軸」「味方でなければ敵」など「尊大な発言」が、米国の評価を下げた一因でもある。米国の評価を回復するにはどうしたらよいか。
米国の価値観を「国際標準」として、異質の文化や長い伝統を持つ中東などが、文句なしにそれを受け入れるのが当然、という姿勢に問題がある。利害が相反する安全保障、気候変動などグローバルな課題についても、相手の言い分に耳を貸す寛容な精神と、問題解決のため国際協調行動を取る基本姿勢を欠いては、一度定着した悪い評価を覆すことは難しい。報告では価値観に忠実に行動するとともに、国内外を問わず率直な対話が必要だという。議会やメディアを含めた外交論争を通じて、米国社会が行政府と「一枚岩」であるという外国の誤ったイメージを薄めるのに役立つというのである。共和党マケイン候補と民主党オバマ候補の激戦が予想される11月の大統領選挙での外交論戦が傷付いた米国の評価を再び高められるかどうか、一つの見所である。
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