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2008-06-30 00:00
北朝鮮の非核化に進歩あり
吉田 康彦
大阪経済法科大学客員教授
北朝鮮を「テロ支援国家」指定から解除する手続きをとることにしたというブッシュ政権の決定に対し、日本のメディアは一様に批判的で、北朝鮮が提出した「申告」に核兵器が含まれていないことにも不満を表明しているが、いずれも6者協議の枠組みを理解していない感情論だ。6者協議の「合意」(2008年2月13日の北京合意)は、第2段階の措置として、北朝鮮が寧辺の核関連施設を「無能力化」し、全核計画の「申告」を提出する見返りとして、米国が北を「テロ支援国家」指定から解除することとし、これを「行動対行動」の「同時行動の原則」で実施することを、あらかじめ定めていたのであり、ブッシュ政権が指定解除をこれ以上先延ばしすれば、在任中の朝鮮半島非核化はとうてい実現しないことになったのだ。
ウラン濃縮計画とシリアへの核技術供与疑惑について、ブッシュ政権が追及の手を緩め、あいまいな表現で別文書扱いにしたことにも批判が出ているが、いくら追及しても北朝鮮が否認を続け、確たる証拠が存在しない以上、「将来は行わない」と約束させただけでも成果だ。次に、既成の核兵器が「申告」に含まれていないことにも批判が出ており、米国が北朝鮮を事実上の「核兵器保有国」として認知したがごとき論調もあるが、大いなる誤解だ。確かに軍部当局者が「北を核保有国として扱うべきである」という趣旨の発言をしているが、国際社会はそんな暴挙を許すほど甘くない。
「北京合意」の第3段階では、米朝平和条約締結、米朝ならびに日朝国交正常化を謳っているが、その見返りは、北のNPT(核不拡散条約)への復帰ならびにIAEA(国際原子力機関)の保障措置(査察)受け入れなのである。NPTは、米ロ英仏中の5カ国以外の核保有を認めておらず、それゆえに不平等条約であり、インド(とこれに対抗するパキスタン)がNPT非加盟なのはこのためだが、北が核保有に固執する限り、見返りは得られない。IAEAの査察も核兵器秘密保持を許さない。北が固執する軽水炉取得も核兵器を隠匿しているかぎり実現しない。第3段階は、ブッシュ大統領在任中は完了しないであろうが、北朝鮮が核保有国として北東アジアに君臨する可能性はない。日本はブッシュ政権のテロ支援国家指定解除に慌てふためく必要はない。朝鮮半島非核化はこれからが正念場に入る。日本が切れるカードはいくらでも残っている。
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