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2008-06-30 00:00
ゲームの理論から北朝鮮問題を考える
角田勝彦
団体役員・元大使
6月26日北朝鮮による核計画申告を受けた米国のテロ支援国家指定解除手続き開始決定により、福田外交への非難が高まっている。米国政府の方針を、あまりにも安易に受け入れたのではないかという「対米追随外交」批判とともに、6月11・12日の日朝協議で北朝鮮の「拉致再調査・『よど号』犯引き渡し」に対し日本側の制裁一部解除が合意されたことへの批判がある。
民主党小沢代表は、同日、那覇市での記者会見で「米国の決定は自国の世界戦略と利害によりなされる。ブッシュ米大統領から福田首相に『拉致問題を忘れない』と電話をかけられてもどうしようもない」と、政府の対応の甘さを批判した。鳩山幹事長も「拉致問題が棚上げされるだけでなく、北朝鮮の核の脅威が逆に増大するのでは、と憂慮している」と懸念を表明した。米国の圧力を背景に日本政府が強硬姿勢で臨み、成果を引きだすことを願っていた拉致被害者家族会の落胆は大きい。国民の反応も冷たい。たとえば、27日国際的にTV放映までされた冷却塔爆破は、政治ショーと軽くあしらわれている。
北朝鮮の核武装によりもっとも脅威を受ける我が国にとり、福田外交が選択した「核と拉致の並行前進路線」は、いまや是認せざるを得ない方針であろう。問題は、そのための具体的交渉である。高村外相は26日夜、「(指定解除)発効までの45日間に拉致問題をどう解決に結び付けるか、しっかりやっていきたい」と述べた。これは対北朝鮮のみならず、日米間の具体的な連携策についての協議も意味する。同外相は「(申告が)核放棄に資すると思わなければ、米国は引き返す勇気を持つのではないか」とも述べた。27日同外相はライス米国務長官と、核・拉致問題の解決に向けての緊密な連携を確認した。同長官は米国の北朝鮮への圧力の継続を明言した。
ここに参考にすべきは、ゲームの理論のうち「TIT FOR TAT(しっぺ返し)」戦略である。詳述は避けるが、これは「非協調を選択していれば、相手が協調を選択したときには大きな利益を得、相手がたとえ非協調を選択したときでも最悪の被害はこうむらない。このため両者が協調を選択すれば利益を引き出せるのに、両者は共倒れの非協調を選択する」という「囚人のジレンマ」(国際関係の通例)を前提に、どうしたら双方に協調を選択させ得るかという戦略なのである。本戦略の研究者アクセルロッド教授は、次の「しっぺ返し」がもっとも早く協調に向かわせると主張する。(1)敵対的であるな、(2)最初に裏切るな、(3)協調と裏切りは相互主義的であれ、(4)単純にしっぺ返しを行え(あまり考えるな)。
もちろん、口先には口先のみで、すなわち行動に対してのみ行動で対処すべきであろう。幸い、米国も、G8も、六か国協議も、拉致問題解決には積極的である。協調的行動の可能性は高まっている。今こそ冷静な対応が求められるときである。
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