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2008-07-25 00:00
消費税で与野党「虚構合戦」をやめよ
杉浦正章
政治評論家
政府が経済財政諮問会議(議長・福田首相)に提出した、2011年度までの経済見通しに関する試算結果によると、「11年度に基礎的財政収支を黒字化する」という目標を、消費税の増税なしで達成するのは一段と厳しい状況になった。対外的にも公約になっている黒字化を先延ばしするか、先延ばししなければ消費税率引き上げしかない、というまさに二者択一の局面となったのである。自民党内には、総選挙を前にほおかぶりして問題をやり過ごすしかない、という声が大勢になっている。これは節約ですべての財源を賄うとする民主党の“虚構”路線と大同小異である。政府税調も首相決断待ちで、なすすべがない状況だ。首相・福田康夫はこの際選挙後に消費税アップを決断するという“まやかし”を回避するため、民主党代表・小沢一郎と党首会談を開き、問題を提起して、消費税不可避の認識を提示し、民主党の対応を迫るべきである。
1月に公表した試算では、約7千億円の赤字とみられていた基礎的財政収支が、3.9兆円の赤字に修正されたと言うことは、もはや増税、それも消費税増税なしでは11年黒字達成は無理、という段階に達したことを意味している。政治論としては「目標先延ばし」やその場しのぎの特別会計の「埋蔵金」流用という方策があるが、これは対外的には財政再建放棄と受け取られ、日本の信用ががた落ちとなる。投資家の日本国債離れを誘発し、国債価格が崩壊しかねない危機が生じかねない。従って、選択肢は一つ、消費税の増税しかないのである。首相は6月にいったん消費税導入を決断したかに見える発言をしたが、1週間で撤回、揺れる心理を示した。総選挙を前に消費税反対の民主党と戦えないことを意識したに違いない。しかし党利党略で処理するには、事が大きすぎる。国民に問題の所在を明確にしないで解散・総選挙に臨んでも、本当の理解は得られない。政治の本道とも憲政の常道とも外れる路線を選択してはならない。政治は国民にうそのつきかたを教えてはならない。
新聞論調も首相に決断を求めている。24日の朝日新聞は「福田首相は大方針を示せ」とする社説で「増税に口をつぐんでおいて、選挙が終わったら増税を持ち出すなどということが許されるはずがない」と指摘、「財政運営の基本方針を選挙で国民へ率直に訴えて支持を得る以外に、打開する道はないのだ。その覚悟を福田首相は見せてほしい」と締めくくっている。毎日新聞も同日の社説で「プライマリーバランス黒字化の11年度達成は何が何でも、やり遂げることだ。同時に、実現の道筋も示さなければならない」と強調した上で「財政がその機能を回復するという点では、国民のためなのだ。黒字化への決意と方策が必要だ」と消費税導入の必要を説いている。読売新聞は解説記事で、収支黒字は困難になったとして「増税不可避」の見通しを述べている。各社に共通した認識は首相の政治決断しかないのに、首相の姿勢が「さっぱり見えてこない」(朝日)といういら立ちである。
しかし、民主党に至っては、ひたすら「デタラメ財源」(前官房長官・与謝野馨)路線を突っ走っており、消費税などは副代表・前原誠司が誠実に訴えて袋だたきにあっている始末だ。しかし、総選挙で民主党が政権を取った場合には、直ちに対応を迫られる問題であり、避けては通れない。民主党はこの際、責任政党を意識できる段階になったのだから、将来の消費税導入の必要を認め、フェアプレーの選挙戦を展開すべきである。与野党が消費税導入を認める選挙の方が、選挙後に国民が「だまし討ちにあった」と感ずるよりはよい。民主党にこれを求めるのが「八百屋で魚を求める」ようなものなら、福田はまず、(1)11年黒字達成の目標堅持、(2)そのためには2-3年後の消費税導入は避けられない、ことを決断すべきだ。その上で小沢との党首会談を呼び掛け、消費税導入の必要を説くべきであろう。消費税問題を民主党に対する“武器”に転ずればよい。
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