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2008-07-28 00:00
公明党は「テロとの戦い」の原点に戻れ
杉浦正章
政治評論家
本来政治的駆け引きとはなじまないインド洋における自衛隊の給油問題が、今度は連立政権内部の事情で再び急浮上してきた。公明党の「福田自民党」離れとも言うべき動きとの連動で、より深刻である。このため給油支援活動措置法が来年1月15日の期限切れ以降延長できるかどうかも微妙となった。折からアフガニスタン情勢は、タリバンの攻勢でタリバン政権崩壊以降もっとも厳しさを増しており、米国の共和・民主両党大統領候補らも「兵力増強」を公約している。給油活動が継続できなければ、ただでさえ北朝鮮問題で齟齬(そご)の生じた日米関係に最悪の影響を及ぼす可能性もある。
公明党は、誕生当時から知っているが、当初は初々しくて清新さも感じられた。しかし政治の波にもまれるに従って、手練手管志向となり“悪擦れ”してきた感が強い。国会の9月末招集を主張しているのも、給油支援活動措置法の延長をさせないためのようである。衆院における「3分の2条項」を使わないまま、給油延長に深入りせず、自党の総選挙を有利に持ち込もうという思惑がある。そこには政党としての基本理念が感じられず、党利党略だけが頭をもたげている。
公明党の政治的思惑は、テロとの戦いを推進する世界の潮流とは全くそぐわないものである。言うまでもないが、給油活動は自由世界の秩序を破壊しようとするアルカイダとタリバンというテロリスト集団との戦いであり、アフガニスタン本土への部隊派遣国は40カ国以上、日本が参加している「不朽の自由作戦・海上阻止活動(OEF-MIO)」への部隊派遣国は8カ国という構成で、いわば「テロを是としない正義」による邪悪なるものとの戦いである。それを先の通常国会で延長に賛成しておきながら、総選挙が近づいたからといって、掌を返そうとするのは、政党として余りに節操がないといわざるを得ない。同党幹部は「給油が延長できても、選挙に負けては無意味」と言っているというが、まさにそれを物語っている。
米大統領選挙でもアフガニスタン問題は争点の一つだが、オバマ、マケイン両候補とも、いまや撤退どころか増強論である。オバマはアフガニスタンでの大統領カルザイとの会談で「対テロ戦を重視している」と強調し、大統領に選出されたら「支援を強化する」考えを伝えた。オバマはその後の演説で「イラクからは16か月で米軍戦闘部隊を撤退させる」計画を改めて示した上で、「アルカイダとタリバンとの戦いを最優先課題にすえる」と言明し、アフガニスタンとパキスタンの国境地帯での戦闘に兵力を増強する方針を示した。 一方、マケインは演説で、イラクに兵力を増派を支持したことは「政治的な賭けだった」と述べ、「米兵やイラク市民の死傷者数減少につながった」として成果を訴えた。そのうえで「アフガニスタンでも同様にすべきだ」として、少なくとも3個旅団を派遣することを支持する考えを示した。
米国は、だれが大統領になってもアフガニスタンでの戦いを強化、継続する方向にある。それにもかかわらず、日本だけが1月15日になれば、公明党の党略で中断か、民主党政権の場合には撤退となりかねない。1月の大統領就任式終了後、新大統領の最初の仕事は「同盟国としての日本の再評価」となるであろう。おそらく新大統領の下で、日米の外交・安保関係は戦後まれに見るほど悪化するだろう。バランス上、米中はより接近し、米国による日本の頭越し外交も常態化しかねない事が懸念される。NATO(北大西洋条約機構)は日本に自衛隊のアフガニスタンへの地上配置を求めており、インド洋での給油停止は国際的孤立も意味する。「テロとの戦い」を国内政争の具にすべきでないことは明白であるが、その泥沼に政治は突っ込もうとしている。首相・福田康夫と公明党代表・太田昭宏の会談の日程調整が遅れているのは、まさに給油問題に絡む臨時国会召集時期で意見のすり合わせががつかないからに違いない。
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