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2008-08-07 00:00
首相は、ギョーザ事件で「隠ぺい」を重ねるな
杉浦正章
政治評論家
天網恢々疎にして漏らさずである。ギョーザ事件の中国発生に関する読売新聞の国際的スクープは、まさに「新聞協会賞」ものであろう。政府が公表しなかったことを野党は「隠ぺい」として追及する方針であり、改造新内閣早々に国民の信頼も大きく揺らいだ。政府がこれ以上正確な内容の公表を遅らせたり、「決着はオリンピック後」などと言っていれば、問題はこじれる一方である。何としてでも早期決着が望まれる。問題は一点に絞られる。「隠ぺい」があったかどうかだ。中国でのギョーザ事件は6月中旬に発生して、7月7日のサミットの1週間前に日本に伝えられたという。福田は「捜査中」を理由に詳細の公表を避けているが、これは理由にならない。
「製造元の天洋食品(中国河北省)のギョーザを食べた中国人に中毒症状が出た」ことだけが問題の核心であり、何も捜査を待つ必要なく、公表できることだ。これだけの重要情報が首相に上げられないことはあり得ない。間違いなく首相の「高度の政治判断」マターであろう。それをしなかったのは、政治的な思惑が作用したとしか思われない。一番の注目点は、消費者行政担当相・野田聖子が「報道で知った」といみじくも述べた点である。つまり政府のトップ機密であったのである。おそらく首相・福田康夫、外相・高村正彦どまりの話であった可能性がある。野田は、外務省と警察庁を呼びつけてクレームを付けたと言うが、クレームを付けるべき対象は首相ではないか。
そこに作用した政治的思惑は、福田にとっては「夾雑(きょうざつ)物なしのサミット成功」であろうし、中国側にとっては「 国家命題のオリンピック成功」であろう。日中共通の“利益”がそこに存在して、公表はオリンピック後か、場合によっては公表しないままほおかむり、の選択肢があったと思われても仕方がない。ここで問題になるのは、日本側の判断で公表しなかったのか、中国側から厳重機密の前提で伝えられたか、それとも日中の「共同調整」の結果なのかだが、まず「共同調整」の結果と見るのが正解であろう。政治問題にもなりつつある。民主党国対委員長の山岡賢次は、「意図的に隠ぺいしていたのではないか」と述べており、臨時国会の新たな火だねとする方向だ。1月に事件が発生して以来、ギョーザ問題の対応のまずさは、内閣の支持率低下の原因の一つであったが、今度は「隠ぺい」という国民無視の行為があったとすれば、その影響は少なからぬものがあろう。
朝日新聞の社説が「ことは人々の命にかかわる問題である。政府はただちに事実を公表すべきだったし、いまわかっていることをきちんと説明すべきではないか」と指摘しているのは正しい。政権の隠ぺい工作は、ニクソン政権のウオーターゲート事件隠ぺい工作と同様に、次から次にぼろぼろと新事実が出てくる形が一番悪い。この問題の解決は、オリンピックなどは考慮に入れず、早期決着しかない。8日の日中首脳会談で決着を目指すルートを確認すると共に、これまでの経緯、事実関係を詳細にわたり公表すべきだ。読売新聞はこの鮮やかなスクープで新聞協会賞を申請すべきだ。申請の締め切りは過ぎているが過去に日経新聞が銀行合併のスクープで締め切り後に入賞したケースもある。新聞大会は秋であり、まだ間に合わせることができる。
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