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2008-08-22 00:00
欧米流の名前表示に異議あり
吉田康彦
大阪経済法科大学客員教授
北京オリンピックもまもなく閉幕するが、テレビ中継で国際試合を見るたびに違和感をおぼえることがある。日本人選手の名前の表記法だ。なぜ欧米流あるいはキリスト教徒流にファースト・ネーム、次いでファミリー・ネームという風に逆にしなければならないのか。中国、韓国、北朝鮮など他の東アジア諸国の選手は、皆まず姓、次に名の順だ。つまり中国女子卓球界の第一人者「張怡寧」(チアン・イーニン)は ZHANG Yining と表示され、アナウンスされるのに対し、彼女と対戦して敗れた「愛ちゃん」こと「福原愛」の表示は Ai FUKUHARA と欧米流にひっくり返る。野球も同様で、韓国チームの大砲「李大浩(LEE Daeho)」は姓、次に名の順そのままだが、日本選手の、たとえば「新井貴浩」はTakahiro ARAI と表示され、アナウンスされる。
ところが、女子ソフトボールの表彰式で、メダルを獲ったチームの選手が1人ひとり紹介されるのを聞いていたら、日本の、たとえば3試合完投した「上野由岐子」投手は「ウエノ・ユキコ」とアナウンスされていた。正しい呼び方だが、不統一でめちゃくちゃだ。選手名の読み順は、国内オリンピック委員会がIOC(国際オリンピック委員会)にエントリーした通りに行なわれることになっており、JOC(日本オリンピック委員会)が欧米流に合わせ、時に自ら混乱しているということになる。
私は、ジャーナリスト、次いで国際公務員として、ニューヨーク、ジュネーヴ、ウィーンの国連機関に10年間勤務したが、自分の名前を「YASUHIKO YOSHIDA」と順序をひっくり返して名乗ったことは一度もない。文化多元主義を尊重する国際機関では名前の呼び方はアイデンティティーの一部であり、欧米流が正当とされているわけではない。
国連の会議でも、参加者のリスト作成では最大限に神経を使う。略称するときどこを採るかは通常大文字で表記するが、ミドル・ネームで呼び合う国民(民族)もあるし、インドネシア人は姓しかない。ミャンマーの「アウンサンスーチー」は全部切らずに続けて読み、すべて大文字になる(ちなみに、これを正確に日本語表記しているのは毎日新聞だけだ。)。ハンガリー人も東アジアと同様、姓、次に名(つまりファースト・ネーム)が来る。その点、日本人ほど無頓着な国民はいない。外国では欧米流にひっくり返せばよいと思い込んでいるのは大間違いだ。
国語審議会は、これまで再三にわたって、「日本人はローマ字表記する場合も姓名の順に名乗るのが望ましい」と勧告しているが、徹底しない。脱亜入欧が世界標準と思い込んだ明治維新から140年、そろそろ欧米偏重の慣行から脱却してもよいのではないか。「名は体を表す」、欧米流に合わせていると心まで支配されかねない。(編集部注:お気づきかと思いますが、日本国際フォーラムは、「YOSHIDA,Yasuhiko」のような姓名順の日本式表記で統一しております)。
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