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2008-08-27 00:00
(連載)米新戦略に対応する日本の戦略はあるか?(1)
鍋嶋敬三
評論家
米国が7月末発表した「2008年国防戦略」は、国際テロ組織アルカイダに指導される過激派テロとの長い戦争に勝つことを、米国の中心的な戦略目的に掲げた。もう一つの特徴は、単独行動主義から協調主義への路線転換である。米国内にあっては、国防総省だけでなく、関係省庁を挙げての協力体制、対外的には同盟国、友好国との緊密な協調の必要性を訴えている。ゲーツ国防長官は「米国は単独で行動しては勝てないのだ」と断言した。同盟国日本にも一層の協力を迫ってくるだろう。新戦略の背景には長期間におよぶ世界的な不確実性への認識がある。今後20年間にわたって人口、資源、エネルギー、環境などさまざまな圧力が、社会、文化、技術そして地政学的な変化と相まって、より大きな不安定を引き起こすだろうと分析している。2030年にはインドの人口は、中国を抜いて15億人と世界一になる予測もある(国連統計)。
このような長期展望の上に国防総省は世界規模の米軍再編を推進している。前方展開のための基地・兵力構成を見直し、戦略環境の変化に応じて不確実性に対応する、柔軟性のある遠征軍への再編が眼目だ。さらにハード・パワー(軍事力)だけでなく、外交や援助といったソフト・パワーにより大きな重点を置く必要性も認めている。経済発展、法の支配、良い統治などのため、文民専門家を迅速に配置する能力の改善を強調したのは、イラク、アフガニスタンでの反省からだ。国防戦略に呼応するように、ライス国務長官が文民対応部隊(Civilian Response Corps=CRC)の創設を打ち出した。「破たん国家やそれ寸前の国に対処することが、米外交政策の主要点になる」(2008年7月16日に国務省でライス長官発表)。そのために2009年度予算で2億4900万ドルの支出を議会に要請した。危機に際してCRCは48時間以内に文民専門家250人を派遣できる。国の安定と再建、紛争防止が主な任務だ。さらに連邦公務員2000人からなる待機グループが30日~180日の間に展開する。(つづく)
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