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2008-08-29 00:00
浅野勇樹氏の「温室効果ガス規制」懐疑論に異議あり
小倉 正
アルバイト
8月14日付けの浅野勇樹氏の投稿「温室効果ガス排出規制が唯一の温暖化対策でよいののか」にいくつか事実誤認の点がありますので、指摘をしておきます。ちなみに、私は、ブログ『温暖化いろいろ』というところで、関連の外国記事などの紹介をしています。より科学的に不確実な要因(エーロゾルの影響、雲の影響などは温暖化と寒冷化両面の寄与があるため確定しづらいわけですが)の寄与を解明(定量化)するには、かなりの時間が必要ですが、科学の歩みに任せて何もしない、ということでは政治はつとまりません。「現在科学的な確実性が高いのは温室効果ガスの寄与だ」というのがIPCCの評価なので温室効果ガスの規制をまず行うのだ、というのが条約交渉の中にある温暖化政治の論理です。特にエーロゾルなど他の要因を総量規制するのは、逆に温暖化を加速するおそれもあることから、まずは手を付けられないのだと見るべきでしょう。
確かに二酸化炭素の排出量は、氷床コアにおける分析結果に照らしても、産業革命前の280ppmから近年の360ppmへと約30%上昇しています。しかし、炭素は自然界を循環しており、森林や、海洋に吸収されています。人為的な排出が起こる前、西暦1800年頃までの1000年程度では、「産業革命前の280ppm」という濃度で安定していました。このことについて、浅野氏は、森林や海洋は当時は排出と吸収が差し引きゼロになっていたが、そのメカニズムが不明であり、炭素循環量の正確な数値化さえもできていないと主張しておられますが、この点は浅野氏の事実誤認です。化石燃料の統計などで分かる人為的排出量の平均58%が大気中に蓄積され、森林や海洋が残りを吸収してくれてきたことが、過去の実績としてあります。長期的に人為的排出を半減しなければ上昇が続く、ということは予測ではなく、主に過去の実績にもとづく主張です。
また、多くの炭素循環の研究では、将来は森林も海洋も吸収が減ったり、排出側に移行することが懸念されており、新たな研究が進めば、より必要な削減目標は厳しくなる方向に移動しているように思われます。現在、過去の特徴、とりわけ最終氷期末の温暖化を解明することにより、現在の温暖化暴走の兆候をつかんで、気候モデルの正確性を高めようとしています。近年脚光を浴びているブロッカーのコンベア仮説は、アイスランド付近で蒸発し、冷却された高濃度の塩分を含む海水が沈み込み、大西洋の深海を流れ太平洋で上昇し、表層を今度は逆流してアイスランドに至る、このようなベルト・コンベアがあると説きます。このコンベアが動いているか否かで、温暖化か寒冷化かの影響が出ると考える仮説です。
ブロッカーのコンベア仮説は将来の温暖化によって起こりうるカタストロフィの一つとして共通認識ができつつありますが、IPCCでは、このコンベアが完全停止する危険は、21世紀中にはおそらく起こらないだろう、数百年先の可能性はあると評価しています。グリーンランドの氷床が融けて、淡水が北大西洋に流れ込むことで、ブロッカーのコンベア・ベルトが停止すれば、局地的な寒冷化は起こるわけですが、それは地球全体の寒冷化ではありません。ましてや、浅野氏がほのめかしているような現在の温暖化の根拠になりうるような学説としては、ブロッカー氏から提示されているわけでもありません。
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