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2008-08-30 00:00
親米派の減少を嘆く
田久保忠衛
杏林大学客員教授
「反米ナショナリスト」などと名指しされると言論界では袋だたきに遭う雰囲気は、いまは薄れつつあるらしい。ムードなどはあてにならないし、定義しようとしても難しいが、いわゆる「親米派」の勢いもさっぱりのようだ。「親米派」がさっぱり振るわないと断言できる根拠はどこにあるかと問われれば、「ある」と答えないわけにはいかない。インド、フランス大使などの経験があるベテラン外交官OBの平林博氏が書いた『首脳外交力:首相、あなた自身がメッセージです!』(NHK出版)の中にきわめて重要な指摘があるのだ。外務省に設けられた総合外交政策局の地位がすべての局の上位に位置し、従来の北米局安全保障課が保持してきた強い権限を「適正なレベルに落とすこと」(176ページ)が創設の理由の一つだったと明言している。
このほか平林氏は「政治の世界においては、一時期より親米派が少なくなった印象がある。若い議員のなかには、米国の大学などで勉強をした者も増えているが、米国重視を声高に言う向きはそう多くはない。かつて、椎名素夫議員などをはじめ、米国との議員交流に熱心であった自民党議員もいたが、現在では、これという名を聞かない。政治の世界も、『米国の呪縛』から解放されつつあるのかもしれない」(176ページ)と米国側の関係者が読んだらドキリとするようなことを書いている。
日本で小泉純一郎、安倍晋三という米国に顔を向けた二代の首相と比べて、福田康夫首相はどのような姿勢であろうか。首相就任後の昨年11月に訪米した首相からは、白い歯を見せた笑顔は少なくともテレビからは観察できなかった。米国からの帰国後訪中した福田首相のにこやかな顔は、訪米時とは対照的だったほどだ。今年に入ってから、胡錦濤主席を迎えたときや、オリンピック開幕式における福田首相の楽しそうな表情は、訪米時の際の顔と違いすぎる。テレビを通じての観察がどれだけ意味があるかは疑問だが、親日派と自他ともに評していた米国の友人も大っぴらに言っているから、さほど見当外れではないと思う。
折からテロ特措法の期限切れをめぐって、昨年と同じような困った事態が発生しようとしている。今年は、野党の民主党だけでなく、与党の公明党までが、期限延長に消極的だというから、事態はすこぶる深刻だ。大統領選挙で米国中が熱狂しているが、これが醒めたらいかなる事態が起こるか。第一は、日本は「テロとの戦い」という民主主義国なら真っ先に立ち上がらなければならない大義に背を向けるのか。第二は、日本経済の血液である石油がインド洋を通る安全は他国に任せ、最大の恩恵を得ている日本は危険を回避しようとするのか。その卑劣は民主主義諸国から指弾され、民主主義諸国の団結を望まないテロリストと自由、民主主義、法治、人治になじまない全体主義国から絶大な拍手を受けるだろう。そこで「断固米国を支援すべし!」との声を挙げるべき親米派が、外務省にも政治家にも少なくなってきたとすれば、平林氏の指摘は日本の将来に重大な意味を持ってこよう。
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