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2008-09-11 00:00
「体制内改革」か「体制の改革」か
鈴木淑夫
元衆議院議員・鈴木政経フォーラム代表
自民党の総裁選に名乗りを上げた人達の意見の対立は、主として経済政策の分野に見られる。この10年間に、日本の1人当たりGDPが世界第3位から18位に転落してしまったことを受けて、自民党政治家の最大の関心事も、日本経済をどうやって立て直すかにあるようだ。新聞などでも分類しているように、ザックリと分ければ、「財政積極派」、「財政規律派」、「上げ潮派」の三つである。「財政積極派」と「財政規律派」の目線は需要サイドに向いている。減税や財政支出拡大などの積極財政で先ずは需要面から景気を立て直すのが、日本経済再建の手始めだとするのが「財政積極派」である。これに対して「財政規律派」は、積極財政を実施しても、結局はそれで拡大した財政赤字を縮小するために緊縮財政に転じるほかないので、長い目で見れば財政赤字を拡大するだけ、日本経済の再建は遠ざかると見る。始めから財政規律を重んじ、財政再建最優先で行った方が、国民は安心し、日本経済の再建は早いと考える。
他方、「上げ潮派」の目線は日本経済の供給サイドに向いている。小泉=竹中流の構造改革によって日本経済の供給サイドの効率を高めることが、日本経済再建の王道と考えている。従って、需要サイドを重視する「財政積極派」、「財政規律派」と「上げ潮派」の対立軸は、小泉=竹中派の構造改革を見直すか、一層推進するかの対立でもある。需要サイドを重視し、構造改革をあまり考えない立場は、どちらかと言えばケイジアンである。供給サイドを重視して構造改革を推進しようという立場は、新古典派寄りだ。どちらが正しいかは時と場合によるが、この10年間の日本経済の国際的地位の低下に関する限り、基本的には経済全体の効率が低下し、潜在成長率が低下したことが主因である。従って、自民党内部の争いに限定すれば、上げ潮派の主張の方が適切ではないかと思う。
しかし、日本の政界全体を見れば、もう一つ小沢民主党の主張がある。これも供給サイドに目を向けた構造改革派に分類出来るが、自民党「上げ潮派」の小泉=竹中流構造改革とは大きな違いがある。小泉改革は、戦後半世紀以上続いてきた日本の体制(野口悠紀夫氏の言う「40年体制」や飯尾潤氏の言う「官僚内閣」「省庁代表制」)を、形を変えることによって存続させる「体制内改革」である。道路、郵政、政府金融、年金、公務員などの制度改革は、形は変わっても、中身は廃止されず、続いている。
小沢民主党は、このように中身を温存したままの「体制内改革」ではなく、中身もろとも体制そのものを変えなければ、日本は立ち直れないという「体制の改革」を目指している。省庁に100人以上の与党議員と一部民間人を入れ、政府=与党の政策決定機構を一元化して、「官僚内閣制」に代えて国民に選ばれた「議員内閣制」を創ろうとしている。官僚主導の道路、政府金融、公務員、特別会計、独立行政法人などの諸制度を廃止、あるいは根本的に変えて、財源を捻出し、子供手当、農業の戸別所得補償、ガソリン暫定税率の廃止、高速道路の無料化、後期高齢者医療制度の廃止、年金制度の一元化と最低保障年金導入などのセイフティネットとシビルミニマムの強化に使おうとしている。果たして国民の多数は、これらの対立軸をどう受けとめ、どのような投票行動をとるのであろうか。
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