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2008-09-26 00:00
稚拙で危険な朝日新聞の解散日程断定の報道
杉浦正章
政治評論家
政局の流れは事実上「与野党話し合い解散」の方向に動きつつあるが、一連の政局報道で多くの報道機関が、国民生活に影響の大きい解散・総選挙の時期を間違って報道したのは問題がある。とりわけ朝日新聞は「10月26日投票」と断定して、首相・麻生太郎から2度にわたってクレームをつけられている。背景には解散権者である首相の意向を無視した未熟な政治判断がある。「自民・公明両党が10月3日に衆院を解散し、10月14日公示、26日に投開票する総選挙日程で合意した」と朝日新聞が1面トップで報じたのは、9月18日のこと。政治記事のなかでも解散・総選挙に関しては、よほどの自信がないかぎり“決め打ち”はしない。しかも見出しの取り方、記事の中身は、いずれも完全に踏み切っており、もう後には引けない書き方だった。
ところが、これに対して総裁選挙の最中の麻生がかみついた。麻生は翌19日、外国特派員協会で「解散権が朝日新聞にあるかのような話で、おかしい。日本語が読めるからといって記事を読んで、それを本社に打電すると、間違える可能性が高い」と語り、世界に朝日のミスリードを知らしめた。それでもまだ足りないのか麻生は、NHKで21日、解散・総選挙の日取りに関して、「きちんと日程を作っているところは朝日新聞。他のところは違うのではないか」と皮肉った。麻生がこれほどまでに一報道機関を批判するのはめづらしいが、その背景には単に自分の“解散権”をないがしろにされたという怒りだけでないものがある。それは麻生が「解散時期をめぐって確執がある」と漏らしているように、選挙対策委員長・古賀誠との確執だ。その図式は景気対策のための緊急経済対策を盛り込んだ補正予算の取り扱いをめぐって、「処理してから」とする麻生と、「問答無用で、解散に踏み切れ」と言う古賀のせめぎ合いである。
多くの報道機関がこの古賀のリークに乗った。9月17日の夜のことである。しかし朝日を除いて“決め打ち”をしたケースはない。可能性の一つとして報じただけである。朝日はその後も自らの報道を定着させるべく、26日投開票を書き続けた。朝日の悪い癖は、その影響力の大きさで「書けばそうなる。そうできる」という自信過剰があることだろう。その自信過剰が麻生を怒らしたのだ。読売新聞と東京新聞の両紙が25日に、「11月2日投開票」に踏み切るなど、新聞も方向転換した。さすがに朝日も25日の紙面では「解散に3つのシナリオがある」などとトーンを変え、社説でも補正審議の必要を説き始めた。断定はできないが、まず方向は11月初旬投開票だ。
もともと古賀の解散発言は「任期満了選挙→秋の解散→任期満了選挙→1月解散」と二転三転しており、信用できないのだ。その古賀に全体重をかける判断をするかと言うことだ。加えて朝日の記事では「自公が合意した」とあるが、解散権は首相にあり、政党にはない。その首相がまだ決まらないうちに、解散が決まるのかということだ。政治部だけでなく、整理部も論理矛盾に気づかず通した。麻生自身は以前から補正成立の必要を説いており、話し合い解散への動きも、17日には出ていた。当解説も一番早く17日には、話し合い解散の動きを察知して、これを伝え、そうなると判断していた。解散・総選挙という政治報道にもっとも必要なのは総合判断である。一人の政治家にだけ乗った断定がいかに稚拙で危険かを物語るケースであった。
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