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2008-09-30 00:00
小沢は、麻生質問への“答弁責任”を果たせ
杉浦正章
政治評論家
首相・麻生太郎の所信表明演説を今は亡き名人・古今亭志ん朝の落語のように聞き入った。独特の節回しで分かりやすく、実にうまい。対立点の際だたせ方も、前首相の官僚作文棒読み型ではなく、身についた表現だ。民主党代表・小沢一郎に対して繰り出した5回連続のパンチは、まさにけんか腰の「果たし状」である。野党を「バカヤロー」呼ばわりして解散、カメラマンに「うるさい」と水をかけた祖父・吉田茂の血を、明らかに受け継いでいる。問題は、小沢がこの「果たし状」を10月1日の代表質問でまともに受け取らないで、受け流しそうな気配であることだ。国民は、今更小沢のご卓説を聴くより、麻生の投げかけた質問に真っ向から答えてもらいたいはずだ。
でないと、総選挙を前に小沢は逃げを打ったことになる。それにつけても、米紙ニューヨーク・タイムズ社説が麻生を「けんか好きな国粋主義者」と酷評した。「国粋主義者」は同紙の伝統的特徴である対日勉強不足が災いして見当外れだが、「けんか好き」だけは当たっている。小沢が直接的に対応するかどうかは別として、麻生の投げかけた問題は総選挙の争点となるものであり、民主党が責任政党なら明確に回答せざるを得ないものである。
まず外交安保問題で、小沢は「国連決議があれば、自衛隊のアフガニスタン派遣も辞さない」と解釈される発言をしており、これは明らかに憲法に抵触する。麻生が小沢を国連至上主義と形容してきたゆえんであり、本会議で「日米同盟と、国連と。両者をどう優先劣後させようとしているのか明確にせよ」とただした論拠であろう。 逆に小沢は、インド洋での給油活動をめぐる新テロ法案を憲法違反と決めつけた。この結果、民主党執行部は話し合い路線を選択できずに、昨年の臨時国会は混乱の極みに達した。「国際社会の一員たる日本が、活動から手を引く選択はない。民主党は、それでもいいと考えるのか」という質問に答えるのは、民主党代表の義務と言ってもよい。
微妙なのは補正予算案への対応だ。麻生は「補正予算の成立こそは、焦眉(しょうび)の急。のめない点があるなら、論拠と共に代表質問で示すべきだ」と小沢にボールを投げた。これは同予算早期成立を拒否すれば、代表質問直後の解散。応ずれば、予算委審議後の事実上の話し合い解散がかかった問いかけである。民主党内には29日になって幹事長・鳩山由紀夫が「反対しなくてはいけないという筋のものでもない」(朝日新聞)と述べるなど、柔軟対応も選択肢に入っているようだ。また反対しても審議引き延ばしをしなければ、参院で否決されたあと、両院協議会をへて成立する流れとなる。攻守逆転し、小沢は国会の代表質問史上極めてまれな“答弁”を求められている形となったのである。
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