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2008-10-01 00:00
日米戦争の責任は日本だけにあるのか
田久保忠衛
杏林大学客員教授
シンクタンク研究員の柳田孝二氏が「『北東アジア安保機構』反対論に反対」の一文を書き(『東アジア共同体評議会会報』2008年秋季号)、私の意見に反対を唱えているが、事実関係に誤りがあるので、指摘しておきたい。柳田氏は「日本の孤立化は、ワシントン体制の約束事を日本が悉く破ったからであって、日英同盟を失ったからではない」として、私の「歴史解釈には無理あるいは破綻がある」と決めつけている。批判は自由だが、私が述べたいのは、ワシントン会議以降だけ切り取って、「日米戦争の責任は日本だけにある」という自虐史観には、「無理があり、破綻がある」ということだ。
歴史は因果の関係を重視しなければならないと思う。日米関係は、日露戦争のあと次第に緊張感を強めた。原因は、満州の市場をめぐる経済的思惑、米国による日本人移民排斥の2点だ。昭和天皇は、その「独白録」の中で「日米戦争の遠因は人種問題だ」と述べておられる。日露戦争後に「日本はフィリピンに対して何らかの行動を起こすのではないか」と恐れたタフト米陸軍長官は、1905年にマニラからの帰途東京に立ち寄り、桂首相との間で「日本がフィリピンに手を出さない代わりに、米国も韓国から手を引く」旨の桂・タフト覚書を交わした。緊張がこれほど高かったのだ。
米国にとって最大の目障りは、日英同盟になっていく。この同盟があるかぎり、少くとも米国が日本とことを構えると、英国も条約上は敵に回さなければならなくなるからだ。1911年の第3回日英同盟更新の交渉時点で、グレイ英外相は米国から同盟継続に対する反対の圧力を受けていた。ワシントン会議はこの延長線上のできごとで、すでに米英両国は意見が一致しており、主力艦の削減のほかに、日英同盟廃棄をこの会議で提案し、実現した。これを知らない幣原喜重郎駐米大使は、日英同盟を四ヵ国条約に切り換える提案にびっくりする。私が言いたいのは、国際情勢の大きな流れに目を配って、幣原のような振舞は2度としたくない、との簡単なことだ。
米国を挑発するような日本の言動があったのは、ワシントン会議前も後も細かく分析しなければならないのは言うまでもない。
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