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2008-10-13 00:00
安全保障面で自民と民主は政策協議を
角田 勝彦
団体役員・元大使
サブプライムローン問題に端を発した金融危機は、深さと広がりにおいて各国の予想を超えた。各国は、10月8日世界の10中銀が緊急協調利下げに踏み切り(日銀は資金の供給強化で対応)、10日のG7(主要7か国財務相・中銀総裁会議)で公的資金を使った金融機関の資本増強を図るなど信用逼迫への対策を講じているが、市場の混乱は収まらない。為替の混乱もある。不動産価格下落、株暴落、資本不足、貸し渋りは景気減速をもたらし、実体経済への影響も出ている。同時不況が危惧されている。
筆者は昨年10月29日の本欄への投稿「警鐘が鳴っている:世界経済の不安な動き」以降何回か危険を指摘してきたが、不幸にして予測が当たったわけである。他方、まずこの困難に対処すべしと「総選挙を急ぐな」(本年1月8日投稿)以下「解散・総選挙は、やるべき仕事をした上で」(本年9月29日投稿)に至るまで、繰り返してきた筆者の主張の通り、補正予算案の成立や新テロ対策特別措置法改正案の成立などが近く見込まれることは喜ばしい。
4人もの日本人科学者がノーベル賞を受賞したこともあり、気をよくした麻生総理が、解散・総選挙を急ぐ民主党などに対し、ほかの法案(追加景気対策を含む)の審議を迫ることも予想される。ここまで政局が動いている現在、解散の先送りにも限度があろう。米国大統領選挙では民主党オバマ勝利の可能性が高いが、その影響も考えねばならないだろう。しかし政局より政治である。仮に政権交代があっても、事態の急速な改善は困難だろう。
問題は、今のところ世論調査から見て総選挙後に予想されるのが、勢力分散による政治の混迷ということである。とくに安全保障問題に関する対立の継続が懸念される。 筆者は「小沢理論に異議あり:ISAF参加をめぐって」(昨年10月15日投稿)で、「民主党の主張は筋が通らない」旨の卑見を明らかにした。9月22日国連安保理が、前回棄権のロシアの賛成も得て、日本参加の海上阻止行動に謝意を表明する決議を採択したことから見ても、民主党の主張には無理がある。国民と政党の間にさまざまな見解が生まれるのは当然であるが、安全保障は、国の命運を決するもっとも重要な分野である。国論の基本的分裂は望ましくない。ましてや政局の道具に使われてはならない。
経済危機に隠れた感があるが、たとえば隣の北朝鮮の問題がある。北朝鮮は、10月7日の黄海上での空対艦ミサイル2回発射に続き、ミサイル発射を計画中とされる。翌8日韓国軍首脳は、北朝鮮がミサイルに搭載できる小型核弾頭の開発を進めていると国会で答弁し、シャープ在韓米軍司令官も、既に北朝鮮の核が兵器化されているとの認識を示した。他方、金正日総書記の健康悪化による混乱説も流れる中、北朝鮮がIAEAの核施設立ち入りを禁止し、6カ国協議も混迷しているのにかかわらず、米国はおそらく国内政治上の考慮から北朝鮮のテロ国家指定解除へと動いた。
テロを含む安全保障上の脅威には、国を挙げて対応する必要がある。先例もある。2007年中国が老朽化した気象衛星を弾道ミサイルで破壊したのにも影響されたのだろうが、2008年5月、国会は与党と民主党の共同提案で、非侵略目的での宇宙の軍事利用を可能にする宇宙基本法を成立させている。アフガニスタンなどを遠く感じる国民の関心をかきたてるためにも、民主党は、責任政党として安全保障問題で自民党とのできる限りの政策協調を目指し、まず充分に協議を行う必要があろう。
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