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2008-10-14 00:00
(連載)年金トラブル解決にいまこそ社会保障番号を(1)
山田 禎介
ジャーナリスト
太平洋の反対側の国の一部、それもはるかな東海岸での歴史から話を進める。かつてニューヨークのハドソン河口の島エリス島は、ヨーロッパから新大陸アメリカに押し寄せた移民たちの入国管理の場所だった。迎える移民局係官には、聞き覚えのない移民の名前は到底覚えられない。それで発音の似たアングロ・サクソン名を適当に当てはめたり、簡略化した新しい名前に同意させた。イタリアで多い姓ベネデット(Bennedetto) はベネット(Bennett)に、ドイツのシュナイダー(Schneider)はスナイダー(Snyder)にと、むずかしいスペルも英語流に簡略化した。それでも父祖の綴りを変えたくないという頑固な人はいる。スペルはそのままのドイツのシュトラウスは、アメリカではストラウスと呼ばれたり、ストローズと発音されたりもした。またノイハルトのスペルは、英語読みではニューハースと優雅になった。
歴史の話はそこまでだが、現代社会にも例がある。ドイツ系の先祖ゲ―プハルトの綴りに固執したものの、その綴りは英語ではゲッパートと発音せざるを得ない。1988年と前回2004年のアメリカ大統領選挙には、この名前の民主党有力政治家が予備選の候補に名乗りを上げた。カーター政権時代、大統領補佐官として表舞台に登場したブレジンスキーは、ポーランド生まれ。このブレジンスキーの正確な発音はスラブ民族でなければ無理だという。それでも几帳面な日本で新進学者として紹介された当時は、精いっぱい頑張って「ブルジェジンスキー」と表記されていた。
さらには欧州連合(EU)とアメリカで輸入問題をめぐって「本家・分家」論争にもなった、おなじみアメリカ・ビール、バドワイザーの例がある。チェコ・ボヘミア地方ブトバイス(ドイツ名)の特産ビール、ブトバイザーにちなんで、アメリカのドイツ移民が英語ブランドとしたのがバドワイザーだ。人種のるつぼのアメリカには、こうした千差万別の綴りと読み方がある。また現代アメリカ人は、あの広大な国土のなかで生涯に数度、住居を変えるのが一般的だ。そんな環境のなかで全米50州、また世界のどこにいても、確実に本人を特定できるのが、アングロ・サクソン得意のコード・ナンバー、ソーシャル・セキュリティー(社会保障)ナンバーのおかげだ。(つづく)
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